デルが2020年モデルとしてビジネス向けノートPCの「Latitude」シリーズのラインナップを刷新し、新しくプレミアムデザインとなる9000番台の製品を投入しました。製品発表は初夏でしたが、その後もテレワーク需要が高まり続けていることもあり、注目すべき製品です。今回は、Intel Core i5-10310Uを搭載する「Latitude 9510 2-in-1」を入手したので、その使い心地を体験しつつ評価してみようと思います。
デル、ビジネスノート「Latitude」刷新 - 新モデルLatitude 9000シリーズ投入
○金属外装採用でずっしりした高級感を備える15.0型機
今回評価する「Latitude 9510 2-in-1」は、CTO(configure to order)に対応する2-in-1タイプのノートPCです。外装に金属素材を採用する高級感あふれる外観で、狭額縁仕様の「InfinityEdge」15.0型ディスプレイを搭載。タッチ操作も行えます。かなり上下のベゼルが狭いので、ディスプレイが少し横に長い印象を受けました。また上部のベゼル部にはカメラ、近接センサー、Windows Hello対応IRカメラを備え、昨今急速に広まったビデオ会議にも十分な画質で参加できます。
本体サイズはW340.2×D215.8×H13.99mmで、15.0型ディスプレイ搭載機としてはフットプリントが小さい点が特徴です。重量は約1.4kgと、実際に手に持ってみると見た目に反してずっしりと重量感があります。金属外装には高級感がありますが、頻繁に持ち運ぶユーザーにとってはもう少し軽いと嬉しいかもしれません。
○Thunderbolt3、USB Type-AとHDMI端子を備える豊富な端子
インタフェースにThunderbolt 3(USB Type-C)×2、USB 3.1 Gen1 Type-A×1、HDMI 2.0、カードリーダー、ヘッドホン出力を搭載。Thunderbolt 3端子はUSB PDに対応して充電ケーブルと併用します。USB Type-AやHDMI端子の搭載で、アダプターなしでも周辺機器を使用できるのは嬉しいところ。
○静かに打鍵できる日本語キーボード
試用機には、バックライトを搭載する日本語配列のテンキーレスキーボードが採用されていました。英語キーボードはオーダー時のカスタマイズで無料オプションとして用意。キーピッチは横19mmで、縦18mmとわずかに横長ですが、実際に使ってみると特に違和感なくタイピングできます。打鍵感はキートップが若干柔らかい独特の感触で、好みが分かれそうな印象です。
配列は一部変則的ですが、おおむね普通の日本語キーボードと言えそう。左下にFnキーではなく、Ctrlキーがある点は見逃せません。また、Windows Hello対応指紋認証センサーと電源スイッチを兼ねるキーがBackSpaceのすぐ上に備わっており、さっと指をあててサインインできます。このキーは十分に固く、カチッとした感触になっているので、BackSpaceを押そうとしてうっかり電源を切ってしまうこともそうないと思います。
○利用者を学習して最適化する「Dell Optimizer」を体験
本製品を含むビジネス向けPCが搭載している目玉機能として、「Dell Optimizer」が挙げられます。なんでも「利用者の作業を学習して動作に反映する、唯一の組み込み型AIベースの最適化ソフトウェア」とのこと。
パフォーマンスをチェックしてから後で触ってみようと思っていましたが、この製品で一番初めに体験することになったのはこのDell Optimizerでした。というのも、なぜか自動スリープをWindows設定からオフにしていたにもかかわらず、勝手にロックされてしまう現象と格闘することになったためです。
調べてみると、Dell Optimizerが内包する「ExpressSign-in」だとわかりました。はじめはこの機能を知らず、静電気か何かに反応して電源が切れているのかと思っていましたが、Dell OptimizerのExpressSign-in機能がユーザーの着席を近接センサーで検知し、ロックとロック解除を自動で行っていたというわけです。とはいえ、特に何もガイダンスやチュートリアルがなく、しかも機能はデフォルトで有効化されているので、Windowsのプッシュ通知を出すなどしてユーザーに教えてくれたほうが親切な気もします。
このほか主要な機能として、ノイズのフィルタリングや音声ストリームの優先順位を決定して高音質に再生する「InteligentAudio」、よく使うアプリケーションを登録して登録して高速に起動する「ExpressResponse」、バッテリーパフォーマンスを向上する「ExpressCharge」を搭載します。
InteligentAudioはとても高音質で、本体スピーカーと右側面のヘッドホン出力の両方で利用できます。特に本体スピーカーはノートPC付属とは思えないほど迫力のあるサウンドで、動画視聴やBGM再生なら外部スピーカーなしでも十分に楽しめます。ただ、中程度のボリュームでもPCそのものにスピーカーの振動がかなり伝わってきます。
ヘッドホン出力にイヤホンなどを接続するとダイアログが出現し、イヤホン、ヘッドホン、スピーカーを選択して最適化してくれます。ためしにYouTubeで音楽を聴いてみたところ、かなり低音を強調したパワフルなサウンドを楽しめました。
ExpressResponseにはしばらくGoogle Chromeを登録して学習させていましたが、もともと起動も動作もかなり速かったため、劇的な変化というほどのものは体験できませんでした。いつも使うアプリケーションの起動や動作がかなり遅い場合には有意かもしれません。
ExpressCharge機能によるものか、バッテリー駆動時間はかなり長かったです。バッテリー駆動時間をPCMark 10のModern Officeモードで計測したところ、13時間44分も動作しました。一日外に持ち出して仕事をしても、バッテリー切れの不安なく使用できそうです。
○最新ビジネス向けノートPCの実力をチェック
ベンチマークを行い、性能を数値で確認してみましょう。使用したのは「CINEBENCH R20」「PC Mark 10 Extend」「Octane 2.0」「CrystalDiskMark」です。
どのテストでも、ビジネス向けノートPCに求められるパフォーマンスを十分に満たす高いスコアを記録しました。かわるがわるさまざまなアプリケーションを起動しては閉じ、開いては操作するPCMark 10では、動作のすべてが高速で描画されていました。また重い負荷がかかるシーンでもファンノイズはかなり静かだったことも印象的です。
業務中にゲームはしないと思いますが、隠れてゲームをしたいエグゼクティブのために「ドラゴンクエストX」「FF14 漆黒のヴィランズ」を使用し、ゲームでもベンチマークを実施しました。解像度はいずれもディスプレイに合わせてフルHD、描画品質は最も軽量化して設定しています。
結果はFF14 漆黒のヴィランズは「普通」、ドラゴンクエスト10のゲームベンチでは「快適」と、すこし苦戦。業務中こっそりゲームするなら他のPCがオススメです。
○高級ビジネス向けノートPCの決定版
ベンチマークテストのスコアはスペック相応の結果ではありましたが、一般的なビジネス用途を十分に満たす高速性能を発揮。個人的には、第8世代Intel Core i5-8350Uを搭載する筆者の普段使いのノートPCよりも段違いに軽快で高速な動作に驚きました。
特に今年の最新モデルから搭載されたDell Optimizerは、ユーザーの利用形態を学習して最適化を行う無二の存在。標準税別価格は387,800円、現在適用されている94,820円の割引を差し引いても292,980円と決して安価ではありませんが、「エグゼクティブ向け」を謳い高い性能・機能を誇る本製品なら、ビジネスの強力なパートナーとしてコスト以上の活躍ができると言えそうです。