確かに幼稚園時代にはどっちが好きか、または描くときにどうやったらリンゴと梨の差を出せるのかなど、わりと園児で話題にのぼる果物ですよね。日本の梨はたしかにリンゴに似ています。それは認めますよ。だけど洋梨はどうなの? 形違ってない? Appleそこまでやる? 米ギズモードのVictoria Songの報告です。
さまざまな異論はあれど、フルーツの神々の中でも、ひときわその曲線美が取りざたされる梨。セザンヌが美のインスピレーションを受けたのも梨からと言われています。芸術家ではない私たちの目から見ても、梨とリンゴは似ていますよね。
他社のフルーツロゴの使用を封印
カナダのウェブメディア、iPhone In Canadaでは、あのApple(アップル)が お食事の支度準備アプリ「Prepear(プリペアー)」に対し、商標登録について異議申し立てを訴えたと報じて話題になっています。それに対し、この異議申し立てに反対する有志たちが立ち上がってChange.orgの署名運動にまで発展する騒ぎになっています。Prepearの代表者は「Appleはこれまでにも、小さな企業が果物の商標を登録しようとしたときどきに、こうやって登録させまいと握りつぶしてきたんです」と怒りをあらわにしています。これまでは果物のロゴを変更したり修正するしかありませんでした。「なぜなら、小さな企業では、巨大なApple相手に訴訟費用を負担できる経済力がないために、権力に屈するしかなかったんです」と悔しさをにじませています。
Appleがリンゴの商標を登録したのは1976年のこと。以来リンゴマークやフルーツの商標の他社による使用は実質的に封印されているというわけです。
今まで登録できたフルーツは皆無
Appleの弁護士はツワモノぞろいで、訴訟に勝つまではどんなに時間がかかろうとも手をゆるめないことでも知られています。今までAppleの目をかいくぐって登録できた果物は皆無とも言われています。ここ数カ月だけを見ても、リンゴの形をしたダイヤモンドのネックレスに、APPLE EJUICEというリンゴ味の電子たばこリキッドに、アメリカ、ウィスコンシン州の学区であるAppletonのリンゴロゴや、 SUPER HEALTHY KIDS, INC.のかわいらしいイチゴなども標的になっています。リンゴやイチゴにとどまらず、 「Franki Pineapple(フランキーパイナップル)」というブランドのデジタル音楽企業(ロゴはどちらかというと手りゅう弾をモデルにしたパイン)に対し、異議申し立てでアップルとパイナップルは意を同じくしないが、果物の名前だというだけで同じ商業的な印象を持つと告訴しています。
Prepearに対する異議申し立てでは、果物をブランドに起用して健康をイメージさせようとしているところがAppleと似ているとしています。 Appleにも健康アプリがありますから、そこを強調しているわけです。またApple Watchは心拍数をモニタリングし、Appleでは医療機関にもソフトウェアを提供していることから、消費者はAppleと健康を結び付けてみているだけでなく、Prepearの洋梨はAppleのロゴを連想させる形状であるともしています。
「Prepearのマークはミニマルなフルーツデザインで右側に垂れ下がる葉がついています。それがあの右側に虫食いのあるAppleのロゴを連想させ、似たような印象を与える。横に並べて見るとこんな感じです」 (Appleの申し立てより)
この洋梨のロゴが消費者を困惑させるというのです。
「Appleマークは有名であり、すぐに認識できるが、Prepareのマークとの差は感じられない。平均的な顧客がロゴを見たときに、PrepareはAppleと関係があり、関係会社であるかもしれなく、Appleによって品質が保証されているかもしれないと信じることにつながるだろう」
Prepearに高価なラップトップコンピューターを買いに行った消費者がPrepareでコンピューターを買えなくて落胆することがあったとしたら、ブランドの風評に傷が生じるとしているのです。
リンゴに取り憑かれたApple
それはないだろうよ、と私なら思いますがね。Appleの異議申し立ての歴史はすさまじく、その長い異議申し立ての数々を見ているだけで、Appleはリンゴに憑りつかれているという気すらしてきます。
2019年には、ノルウェーの政党進歩党のロゴにリンゴが使用されているとして、Appleはこのときも異議申し立てしています。さらにBanana Computer(バナナコンピュータ)とBanana Mobile(バナナモバイル)にも、さらには同じく梨のPear Technologies(ペアテクノロジー)にも異議申し立てをしています。
Change.orgの嘆願書によれば、わずか5人の従業員で構成されていたPrepearは、訴訟費用に数千ドルを費やさなくてはならない羽目になり、すでに従業員のひとりを解雇せざるを得なくなったと訴えています。また、このまま黙って見ているだけにはおさまらないようで、「Appleが中小企業にこうして攻撃的なまでに法的行為におよんでロゴを守るこの姿勢には、道徳的な問題があると感じる」としたうえで、「わが社のロゴは守り抜かなくてはならない」と息巻いています。
「Appleとはとことん戦い抜くつもりです。ロゴを守るということだけでなく、巨大なテック企業が小さな企業をいじめるその体質自体を変えなくてはならない」
Change.orgの嘆願書には2万6000もの署名がすでに集まっており、Appleにこの訴訟の取り下げを要求しているといいます。「大きなテック企業がその立場と金の力を利用して小さな企業をいじめるという風潮を変えなくてはならないのです。「すでにコロナ禍でたいへんな思いをしているというのに、追い打ちをかけるような訴訟はひどすぎる」というわけです。
どうでしょう、この梨のロゴを見て、あなたはPrepareにApple製コンピュータを買いに行きますか?