サムスン電子が夏恒例の「Galaxy UNPACKED」イベントをオンラインで開催した。おなじみのGalaxy Noteシリーズの最新機種「Galaxy Note20」をはじめ、タブレットの「Galaxy Tab S7」、折りたたみ式「Galaxy Z Fold 2」、スマートウオッチ「Galaxy Watch3」、ワイヤレスイヤフォン「Galaxy Buds Live」を発表。モバイルデバイスでの王者の技術力を見せた。
今年も夏に発表されたGalaxy Note20 Ultra
最新機能がてんこ盛りの「Galaxy Note20」
新たに登場した5ラインのうち、注目度が一番高いのはやはりGalaxy Noteシリーズだろう。Sシリーズが「Galaxy S20」となったのに合わせ、こちらも「Galaxy Note20」に。画面サイズは標準モデルで6.7型と、前年モデルのNote10の6.3型からさらに大きくなった(Galaxy Note 10+は6.8型)。大型画面を好むユーザー向けに、さらに上位となる6.9型の「Galaxy Note20 Ultra」も用意した。
両モデルともおなじみのスタイラスペン「S Pen」が利用可能。S Penは、遅延が9ミリ秒になるなど、さらに強化されている。合わせて、モニター、マウス、キーボードと接続できる「Samsung DeX」がワイヤレス対応となり、Miracast対応デバイスと無線接続できる。
個人的に気になったのは、オーディオ録音とメモ書きの同期機能、PDFインポート、Samsungアカウントを利用したスマートフォン、タブレット、Windows 10 PCとの連携だ。
このほか、ペン入力アプリ「Samsung Notes」と「OneNote」「Outlook」「Microsoft Teams」などとの連携も発表された。
もちろん、カメラ側も強化が図られている。両モデルとも背面に3眼カメラを搭載。特にUltraには1億画素カメラを搭載する。さらに縦横比21:9で24fpsでの動画撮影など、ことスペックにかけては最高峰レベルを実現している。ネットワークはもちろん5Gに対応する。
しかし、1000ドルの5Gスマホには大きな需要はあるのか?
このように、最新のGalaxy Note20は新しさというよりも、既存機能がパワーアップした内容と言える。気になるお値段だが、Galaxy Note20は999ドル(約10万6000円)、Galaxy Note20 Ultraは1299ドルだ(約13万8000円)。
問題はこの端末が売れるかどうか。新型コロナウイルス感染症により、いまだテレワーク主体の状況が続き、世界主要国のGDPは縮小の予測が出る中、Galaxy Note20の需要はあるのだろうかという点。世界のオペレーターの中には5Gネットワークローンチを遅らせているところさえもあるのだ。また、家に居られる限りは在宅でという社会の雰囲気の中で、ハイスペックなスマホを“持ち歩く”シチュエーションがどのぐらいあるのかとも思う。
もっとも、Galaxy Note20の値段自体は極端に高いものではない。現状の5Gスマートフォンが高額(5Gスマホ自体はいずれ下がるだろうが)であり、市場に占める比率もまだまだ低い。Digitime Researchによると、2020年の5Gスマホ出荷台数予測は2億5000万台。全体の20%を占めるという。だがこれを中国と中国以外に分けてみると変わってくる。中国市場の出荷台数予測は1億7000万台で、52.7%を占めているのに対し、中国以外では8230万台、この市場に占める比率は10%以下とのことだ。
現時点での5Gスマートフォンの平均販売価格(ASP)は、当初からは下がったものの800ドル程度と言われている。
今後重要なのはミッドレンジ戦略
いまだ高価な5Gスマートフォンだが、サムスン自体はミッドレンジの「Galaxy A」シリーズでも5Gスマートフォンを投入している。
アップルが4月に発表した新型iPhone SEが市場に好感を持って受け入れられたことを考えると、Galaxy Aラインを訴求するのは1つの手のように見える。400ドル以上のプレミアムセグメントではアップルのシェアが57%、サムスンは19%と大きく水を開けられているのだ。
余談だが、以前は“Galaxy”といえばチョコレートだった。イギリスのチョコレートブランドで、欧州や米国でも販売されておりご存知の方も多いだろう(イギリスでチョコレートを買うならCadbury押しだが、Galaxyも悪くない)。Galaxy UNPACKEDのイントロでついこのチョコレートのことを思い出した。
ブランディング戦略が奏功し、私をはじめ一部のユーザーにはGalaxyと聞くと連想するものを変えてしまった。だが、状況は変化している。市場と法廷の両方でアップルとの激しい戦いを繰り広げ、Android勢では揺るぎない王者となったが、2020年第2四半期についに王座をファーウェイに明け渡してしまった。
コロナ禍でスマホ市場は打撃を受けており、業界全体が縮小している。IDCの第2四半期のレポートによると、業界全体は16%のマイナス成長であるのに対し、サムスンは同28.9%のマイナスという。同社がこの状況をどう乗り切るのかが注目される。