スマホやパソコンのロック解除から、イベントやテーマパークの入出時確認まで……『顔認証カメラ』は着々と私たちの生活の中に浸透してきている。このように便利である反面、中国ではこのテクノロジーが反体制派活動の監視・弾圧用途などにも使われているとの指摘もあり、人権問題など倫理面からの課題も多いようだ。
今回、そんな「顔認証カメラの功罪」について論じた三井住友DSアセットマネジメントによるマーケットレポートを、以下にて紹介していきたい。
使用が拡大しつつある『顔認証カメラ』
従来、監視カメラは防犯や防災用途など幅広く使用されてきたが、これに輪郭や目鼻口の位置など顔の特徴を利用して顔を認識するシステムを搭載し、人物を特定できるようにしたものが『顔認証カメラ』だ。
『顔認証カメラ』はスマホやパソコンのロック解除やテーマパーク入出場時の本人確認から、空港などでのテロリストや犯罪者の割り出しなどにも使用されている。
中国では2億台を超える『顔認証カメラ』ネットワークの天網が有名だが、今回の新型コロナ禍ではこのネットワークを駆使し、感染を収束させたと報じられている。一方、このネットワークはデモなど反体制派の活動監視や、ウイグル自治区の弾圧にも使用されているとの指摘もあり、世界的な問題となっている。
各国で対応が分かれる
日本でも、主要な空港で『顔認証カメラ』を利用した出入国審査が導入され、空港の混雑緩和と審査待ち時間短縮に貢献している。また、セブン銀行とNECは『顔認証カメラ』を活用した次世代ATMを開発し、昨年9月以降、順次導入・入れ替えを進めている。
一方、米国では個人情報保護の観点からも、差別を助長しかねないことから、アマゾンやIBMなどで『顔認証カメラ』を敬遠する動きが広まっている。
また、欧州も新型コロナ感染抑制のため一部に使用例もみられるが、一般データ保護規則(GDPR)を世界に先駆けて制定したように、個人情報保護に敏感な国が多く、『顔認証カメラ』の使用拡大には消極的と見られる。
問題に配慮しながら、有効な活用が求められる
『顔認証カメラ』は非常に便利なものであり、新型コロナの感染抑制においては圧倒的な効果を発揮するなど有益な面も多くみられる。一方、欧米各国が中国はウイグル自治区の弾圧のために『顔認証カメラ』を使用していると指摘しているように、倫理的な問題も多くはらんでいる。
正に、監視強化と権利保護とのバランスとなるが、どちらか一方ではなく利便性など良いところを取り入れつつ、人権などに配慮しながら上手に運用していくことが望まれる。