iOS 14ではAndroidのようなウィジェット表示ができるようになる
現在スマートフォン市場は、ざっくりと、Android 85%、iOS 15%というシェアだと理解しておけば、さほど外れないのではないでしょうか。
市場が飽和する中で、アップルはAndroidからどれだけのユーザーをiPhoneに「スイッチ」してもらうかという戦略を強めていかなければなりません。
実際、MacはWindowsが市場を握ってから、常にスイッチを狙い続けてきた歴史があり、スイッチキャンペーンや、MacとPCが登場する「Get A Mac」キャンペーンなどが展開されていました。
YouTubeには、スイッチやGet A Macのコマーシャルビデオがまとめられているので、ご参照。
これらに比べると、現在のAndroidからiPhoneへのスイッチを案内するページは、幾分実用的と言えるかもしれません。
このapple.com/switchというアドレスは、先述のスイッチキャンペーンのビデオでも用いられてきたアドレスであることからもわかる通り、「スイッチ」はもはやアップルの日常的な戦略となっています。
その成果についての評価は難しいところです。コンピュータ市場拡大の速度以上にMacが発展していたか?スマホ市場が減退する中で、iPhoneが成長を続けているか?という数字上の評価をするなら、現状維持のために必要だった、というべきでしょう。
●iOS 14は、キャッチアップ要素が多い
Androidとの競争は常に繰り広げられています。たとえばARを含むアプリAPIの整備状況・動作については、iPhoneが常にリードしてきました。プライバシーへの取り組みや信頼感も同様です。
一方で、アプリの自由度、端末カスタマイズの自由度の面では、常にAndroidが勝利しており、むしろこの部分についてiPhoneはコンサバティブな姿勢を貫いています。筆者はiOS 14には、「体験のコンパクト化」というコンセプトを見出していますが、その中にはAndoridへのキャッチアップという要素も多く見受けられます。
今回のテーマであるウィジェットについても、同様と言えます。
ウィジェットは、iOS 8に登場し、通知センター内の「今日」タブに並べることができます。ウィジェットというと小さな枠の中に収まったミニアプリ、もしくは情報表示のイメージですが、iOS 8で実装されたウィジェットはどちらかというとショートカットやメニューリストを編集するようなイメージでした。
そこから発展し、iPhoneのホーム画面へのウィジェット配置が(ようやく)可能となったのです。
●ウィジェットはショートカット的に活用したい
iOS 14で対応するウィジェットは、簡単に言えば大・中・小の3サイズ。大はアプリで言えば4×4個分の領域を占有し、中は横長の4×2個分、小はスクエアの2×2個分です。
アプリ開発者は、複数のサイズ・複数の種類ののウィジェットに対応させることができ、各サイズで何を表示するかを選択することができます。
アプリを長押しするなど、ホーム画面の編集モードに入って、プラスボタンを押すことで、ウィジェットを追加することができます。ウィジェットを配置すると、その部分はアプリアイコンが避けてくれる仕組み。
iOSにおけるウィジェットのコンセプトは、適切で一覧性が高い情報を表示すること。そのデザインの例として引用されていたのがwatchOSのコンプリケーションズでした。
コンプリケーションズは文字盤に埋め込む情報表示機能で、カレンダーやストップウォッチなどの最新の情報を表示したり、タップすることでそのアプリへのショートカットにもなります。こうした使い勝手をiPhoneのホーム画面にも持ち込もうというアイデアだと理解しています。
iPhoneのウィジェットのホーム画面への配置も、同じようなコンセプトで捉えると良さそうです。アプリを開くまでもなく情報を確認したり、その表示からより細かい情報を確認したり、操作したい場合にはタップすることでアプリに飛ぶ、情報表示機能付きのショートカットという位置づけ。
一方、大きなサイズのウィジェットも用意されており、例えばカレンダーの場合、直近の予定と今月のカレンダーの両方を表示できます。この場合、カレンダーアプリを開かず、ウィジェットだけで事足りるわけで、中・大サイズは確認用、小サイズはショートカット、という使い分けを考えると、使いこなせそうですね。
●「スマートスタック」というアイデア
Apple Watchのウォッチフェイスには、Siriが用意されています。Siriがユーザーにとって「次に必要そうな情報」をカードにして文字盤に並べてくれる仕組みになっています。
これに似たようなウィジェットを、iPhoneのホーム画面にも配置することができます。
それが、スマートスタックです。
名前の通り、複数のウィジェットが1つの領域に重ねられている(スタックされている)状態で、ウィジェット内を上下にスワイプすることで、スタックされたウィジェットの表示を切り替えることができます。
アプリの使用頻度をもとに、ユーザーの状況や最新情報のアップデートに応じて、自動的にスタック内のウィジェットを切り替えて表示してくれるようになります。また、これまでも通知センター内のウィジェットや、Spotlight検索に用意されていたアプリの候補表示「Siriからの提案」ウィジェットも用意されるようで、これをホーム画面に配置すれば、普通にアプリが並んでいるように見えて、じつは動的にアプリの並びが変わる、という領域を設定することもできそうです。
●SwiftUIとウィジェット
今回、アプリとしてウィジェットが面白い点は、SwiftUIによるウィジェット作成をする際、対応する環境がiOSに加えて、iPadOS、さらにmacOSもカバーできるようになった点です。
SwiftUIは、iPhone、iPad、Mac、Apple Watch、Apple TVと、あらゆるプラットホームのUIをデザインできる環境。これとWidgetKitが組み合わせられることで、アプリの活用方法としてのウィジェット、という定義がより明確化されるかもしれません。
これまでMacにもウィジェットは存在していましたが、 macOS Big SurではiPhone・iPadと共通のウィジェットを作ることもできるイメージです。Apple Watchのコンプリケーションズよりは表現力がありますが、基本的には一目で情報を伝え、アプリや機能のショートカットとして働く役割は同じ。
デジタル体験をよりコンパクトにしていく手段として、注目してみたいと思います。