最近のスマートフォンは急速充電に対応したものが多く、たとえばソニーのXperia 1 IIなら30分で50%の充電ができます。寝起きに電池残量がゼロでも、あわてて出かける準備をしている間に半分程度充電できるというわけです。この急速充電技術は年々高速化が進んでおり、OPPOが7月15日に発表した最新技術ではなんと20分で満充電ができるといいます。Xperia 1 IIの充電時間は25Wの充電器を使った場合ですが、OPPOの技術は125Wという高い電力で充電を行います。
OPPO、スマホを20分でフル充電する125W急速充電技術などを発表
しかしOPPOはもっとすごい技術も同時に発表しました。それはケーブル無し、ワイヤレス充電でスマートフォンを30分で満充電にする急速充電システム「65W AIRVOOC」です。OPPOはこれまで「VOOC」と呼ぶ自社独自の急速充電システムを開発してきました。ケーブルを使った「SuperVOOC 2.0」では65Wの充電器でスマートフォンを30分で満充電できます。今回発表された65W AIRVOOCは、同じ65Wの電力を使いワイヤレスでもケーブルとほぼ同等の充電速度を実現しています。
ワイヤレスで30分でスマートフォンが充電できるようになると、スマートフォンの使い方も大きく変わります。カフェのテーブルに対応のワイヤレス充電台があれば、コーヒーを飲んで一服する間、あるいはSNSでチャットをしている間に、気が付けばスマートフォンが満充電されているのです。しかもケーブルがいりませんから、テーブルの上にスマートフォンを置くだけで充電が開始されます。もうカバンの中からモバイルバッテリーや充電ケーブルを出す必要すらなくなります。
このように「ケーブルがいらない」「あっという間に充電できる」ことが当たり前になると、スマートフォンを充電するのも面倒ではなくなりますね。ただし1つだけ留意しなければならないことがあります。この夢のようなワイヤレス急速充電はOPPOの65W AIRVOOCに対応した製品でしか利用できません。今後技術が公開され他社にも採用が進むことを望みたいものです。
さて身の回りを見てみると、今やバッテリーを内蔵して動くスマート機器がどんどん増えています。たとえば腕時計も数年前までは電池交換を気にせず使う製品でしたが、いまやスマートウォッチとなったことで数日おきに充電が必要です。自宅にはスマートスピーカーがあり天気や予定を聞いたり音楽を流すこともできますが、バッテリー内臓のものは充電が面倒なためかまだあまり多くありません。
将来は家の中に様々なセンサーが取り付けられるようになるでしょうが、ボタン電池で動かないものは電力を必要とします。数年後には家庭内の部屋ごとにIPカメラを設置することも当たり前になっているかもしれません。しかしカメラを動かすためにはコンセントから出力を供給するか、バッテリー駆動にして定期的にそのバッテリーを充電する必要があります。
このように身の回りや家の中に電力を必要とするIoTデバイスが増えてくると、それらをどのように充電するかが問題となっていきます。スマートウォッチも最近の製品はワイヤレス充電タイプのものが多く、腕から外して置くだけで充電できるようになりました。今後IoTデバイスは「充電のしやすさ」が求められるようになっていきます。
そこでワイヤレス充電を拡張し、より遠い距離でも充電できる「空間伝送型ワイヤレス充電」と呼ばれる技術の開発も進められています。たとえばアメリカのOssiaは最大10メートル離れていても、1Wで充電できるシステムを開発しています。OssiaにはKDDIが出資しており、2016年には試作モデルによるスマートフォンの充電デモも行われました。スマートフォンなどにはCotaに対応する専用チップを搭載。充電台不要で室内のどこにあるスマートフォンでも充電できるのです。CotaはWi-Fiと同じ2.4GHzの無線周波数を使用します。
この空間伝送型ワイヤレス充電技術は家庭向けだけではなく、今後工場やオフィスにも設置が増えるIoT機器向けの展開として総務省も導入に向けた動きを見せています。7月14日に行われた情報通信審議会では同技術についての技術的条件に関する一部答申を受け、その内容を公開しました。技術的には2.4GHzに加え900MHz、5.7GHzの3つの周波数帯を利用し、無人の工場、物流現場、老人の介護施設などへの応用展開を想定するとのこと。将来は「スマートフォンやタブレット、スマートウォッチがケーブル無しでどこでも充電できる」システムの実現が期待されます。
OPPOの技術も、125Wのケーブルによる急速充電、65Wのワイヤレス充電はどちらも今後スマートフォン以外への応用展開も期待され、それぞれが異なるアプリケーション向けに発展していくことでしょう。数年もすればスマートフォンの「充電ケーブル」という存在が無くなっているかもしれません。