都市封鎖のおかげで溢れるほどの研究時間に恵まれた天文学者は、そのチャンスを活かして世界で初めて発見された「アインシュタイン・リング」の距離を測定することにようやく成功したそうだ。その距離は100億光年だったという。
「アインシュタイン・リング」とは、大きな質量を持つ天体がその重力によって光を曲げること重力レンズ現象の一種で、(その天体の後ろにある天体がリングのような像となって見えるものは、アインシュタイン・リングと呼ばれている。
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天体の重力が作り出すリング
アインシュタインリングは一般相対性理論から予測される現象だったが、アインシュタイン自身は実際にそれが観測されることはないだろうと考えていた。
単体の星では小さな重力レンズしか作り出せず、地球からリングを観察できるような絶妙な配置に星が並ぶことなどまずあり得ないからだ。
だが、それが星ではなく、銀河や銀河団なら、十分に大きなレンズを作ることができる。そして世界で初めて1987に発見されたアインシュタイン・リングが「MG1131+0456」だ。
銀河の向こう側にあるクエーサー
MG1131+0456は、重力レンズで映し出された「クエーサー」だ。
クエーサーとは、活動銀河核の一種で、銀河の中心付近にあるコンパクトな領域である。その真ん中には超大質量ブラックホールがあり、周囲の物質を貪り食っているために、凄まじいエネルギーが放出されている。
一般にクエーサーは非常に遠くにあるので、発見は難しい。ところが、それよりも地球の近くにある別の銀河が重力レンズとして働いてくれると、クエーサーから届く光を明るくしてくれるので観測がしやすくなる。これまで200ほどのクエーサーが、重力レンズを通して観測されてきた。
しかしブラックホールが巻き上げるガスや塵のせいで霞んでしまい、さらに発見が難しいものもある。NASAジェット推進研究所のダニエル・スターン氏とケンブリッジ大学のドミニク・ウォルトン氏が関心を持っているのは、そうした天体だった。