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ポストコロナのスポーツ中継。メディアのソーシャル・ディスタンスはどうするか

5G時代の幕開けと共に、ポストコロナは、スポーツのAI自動撮影促進の鍵をにぎるかもしれない。

新型コロナウイルスによって絶望的なまでに活動を制限されていたスポーツ界も、再開に向けようやく動き始めた。プロ野球は6月19日に開幕、JリーグもJ2、J3の6月27日開幕を受け、J1も7月4日にスタートする予定だ。

巨人の坂本勇人選手などから、新たに新型コロナウイルスの陽性反応が確認されたとの報道もあったが、日本野球機構(NPB)は「開幕には影響しない」との見解を示した。スポーツファンのみならず、スポーツを生業とする者にとっても、長いトンネルを抜ける光の兆しをやっと見いだしたような気分だ。

ただし当面は無観客試合。先日「無観客試合」という呼称がネガティブな印象を与えるという理由から、日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長は、これに代わるポジティブなネーミングを募集した。

無観客試合による興行収入減少への対処方として前回、スポーツの新たな観戦方法を紹介したが、これを伝えるメディア側の体制についても模索する必要性が浮かび上がりそうだ。

「密です?」新型コロナで再考を迫られるスポーツのLIVE中継

3月に開催された日本でおそらく初めてとなる本格的ドローン・レース「スーパードローン・チャンピオンシップ」は新型コロナウイルスへの対応としてLIVE中継を断念。これはLIVE中継のために配置される多くの人員とその移動について配慮した結果だ。

スポーツのLIVE中継は、箱根駅伝のような一大イベントともなると、数百人のスタッフを動員する。新型コロナの影響が年を越すとなると、関係者は頭を痛めることになるだろう。スタジアムで行なわれるプロ野球中継であっても、中継車、電源車を配置し、複数台のカメラマン、スイッチャー、VE、編集、音声、MA,スローオペレーター、マスター、制作、ディレクター、プロデューサーなど、多くの人員が求められる。こうした部隊を毎試合展開する既存の手法は、果たしてポストコロナ時代に適切なのだろうか。運用についても再考を迫られる恐れがある。

スポーツ中継や報道としても、以前のように大勢のメディアがプレスルームに押し寄せ、試合を見守り、伝えるというスタイルは、試合運営と同様に、なんらかの工夫を求められそうだ。メディア側の人数を絞り、ソーシャル・ディスタンスを保つという解決策では、大規模なイベントには対応できない。

予算が潤沢とはいえない地方のテレビ局では、甲子園予選大会を中継するための人員の手配も含めて、厳しい状況下にある。これをスマートフォンなどの簡易的な撮影方法で補完する試みが始まっており、5G商用化にその進化が見込まれる点についてはすでにお伝えした。

5Gを活用した手動による簡易撮影だけではなく、AIによる「自動撮影」のソリューションも昨今、市民権を得ようとしている。

NTT西日本は、朝日放送グループホールディングスとの共同出資により「NTTSportict」を4月に設立。5月にはモバイルアプリ「Player!」との協力により、無観客で行われるアマチュア・スポーツの100試合を無償で中継すると発表した。あくまで中学生から大学生までの試合を対象としてはいるものの、「Pixellot」というAIによる自動撮影機材を使用することで、人員配備を最低限に抑えている。

イスラエル発の自動撮影システム「Pixellot」を活用する様子

「Pixellot」とはイスラエルのベンチャー企業であり、同社が開発した自動撮影システムの名称だ。ひとつの機材に4つの光学カメラを内蔵しており、この機材をスタジアム内の適切な位置に設置し、内蔵されたカバー範囲の異なる4つのカメラで同時に撮影することができる。また撮影された4つ別々の映像をAIによりスティッチし、ひとつの画面として提供する。サッカーやラグビーのようなワイドなスタジアムでも、本システムを使えば全面を一挙に同時自動撮影できる。同社はこれを用いれば、撮影コストを「10分の1に抑えられる」としている。

ただし、デモ映像をご覧になればおわかり頂ける通り、ピッチ、グランド全体を俯瞰する画像になるため、アマチュアスポーツでは許容されても、有料視聴などを想定したプロの試合の中継には堪えられないだろう。AIにより自動的にカメラが切り替わるというシステムゆえに、その都度ズームしたりパンしたり、シーンごとに融通をきかせた映像を切り取るレベルまでには成熟していない。Pixellotもさらなる技術開発を行っているものの、NTTSportictが対象をアマチュアに絞っているのは、こうした足かせを勘案してのことだろう。

自動撮影は「Pixellot」に限ったソリューションではない。同じくイスラエルの「トラック160」やアメリカの「プレイメイカー」、スウェーデンの「トラキャブ」などなど、トラッキングとデータ生成を含め、実に様々なサービスが市場に出回っている。いまだ日進月歩の領域であり、各社ともにさらなる開発に注力する中、比較的新しいこの業界図が今後どう変遷を重ねて行くのか、目が離せない。



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