新型コロナウイルスに対するリボ核酸(RNA)のワクチン技術を共同で開発すると、川崎市産業振興財団のナノ医療イノベーションセンターと東京都医学総合研究所が5日までに発表した。ウイルスの目印となる抗原たんぱく質を生み出すRNAを人の免疫細胞に送り込み、ウイルスが侵入しようとした際に識別して退治できるようにする。
同センター長の片岡一則・東京大特任教授は「これまで培ってきた技術を基盤として、なるべく早く、実際に使えるワクチンにしたい」と話している。
ワクチンとして使うRNAの種類は、たんぱく質を構成するアミノ酸の情報を伝える「メッセンジャーRNA(mRNA)」。最適な抗原たんぱく質を生み出すよう、組み換えワクチン技術を持つ都医学総研がmRNAを設計する。
一方、1本鎖のmRNAのままでは免疫細胞が活性化しないので、同センターが開発した部分的に2本鎖にする技術を活用する。そのまま人体に投与するとすぐ分解されてしまうため、多数のmRNAが球状に集まった微粒子の状態にして投与する技術を応用し、免疫細胞に届ける。
同センター客員研究員の内田智士・東大特任助教によると、ダミーのたんぱく質を生み出すmRNAにこれらの技術を使い、マウスに投与する実験を行ったところ、免疫細胞が活性化し、毒性はなかった。人の免疫細胞への投与でも活性化できた。