最近、トヨタ自動車とNTTがスマートシティ構築で協業を発表し、国会ではスーパーシティ法案が成立し、ますます個人情報のセキュリティ確保が重要になってきている。
NXP、セキュアなカーアクセスを可能にするデジタル鍵ソリューションを発表
一方、新型コロナウイルス感染防止のためのソーシャルディスタンスが必要な環境での非接触な個人情報のやり取りが今まで以上に求められるようになってきている。
グローバルな規模でのこのような新たな社会環境の変化に対応するため、NXP Semiconductorsは、スマートシティ・サービス向け非接触カード搭載IC「MIFARE DESFire EV3」を発表した。MIFAREは、NXPが推進する非接触ICカード通信規格で、非接触ICカードや近接型ICカードとして世界でもっとも多く採用されているといわれている。
今回発表された製品は、同社の非接触型MIFARE DESFire製品ポートフォリオの第3世代に位置づけられるICで、前世代品と互換性を持ちつつ、動作距離(読み取り性能)の拡大とトランザクション速度の向上により性能を向上させたという。
非接触の読み取り性能を15%向上
動作距離(性能)はリーダーやRFのばらつきによって、読み取り可否が左右されるケースが多いが、MIFARE DESFire EV3ではハードウェアやOSが刷新され、RFインタフェースがこれまで以上に最適化されたため、RFの弱いリーダーとの間でも、ISO 14443で規格されている読取距離(最大100mm)に対して、安定した性能が十分に得られるという。
アプリケーション側で見ると、RFの弱いリーダーであっても、タグのかざし方(タッチの仕方)が雑であっても、MIFARE DESFire EV3では通信エラーを減らすことができるようになるため、より高速でセキュアな「オール・タッチフリー」を提供できるようになるという。「ISO 14443規格を超える動作距離を提供するものではないが、読み取る性能は既成製品に比べて15%向上している」とNXPの開発担当者は話している。
主な仕様は以下の通り。
不揮発性メモリサイズ:2/4/8KB
データ保持期間:25年
読み込み回数:100万回
読み込み速度:106~848kbits/s
動作距離:最大100mm
先進技術によりセキュリティレベルをさらに向上
MIFARE DESFire EV3 ICの広範なセキュリティ機能は、データ保護とプライバシー確保のためのさまざまな手段を提供するという。
このICはハードウェアとソフトウェアがコモンクライテリア「EAL 5+」認証済みで、広範なオープン暗号化アルゴリズムに対応している。カードにより生成されたMACはトランザクションのセキュアな認証を可能にし、新しいトランザクション・タイマ機能は中間者攻撃の防止を可能にすることから、攻撃者によるトランザクションの妨害をより困難にしている。さらに、新しいSecure Unique NFC(SUN)メッセージング機能はデータの機密性と完全性のよりセキュアな方法を提供しており、カード、電話、チケットがタップされSUN機能が有効になるたびに、タップごとに固有の認証メッセージと暗号によってセキュアなURLが生成され、検証のためにサーバに送信されることから、タップのクローン化が不可能になるという。
スマートシティ・サービスを「オール・タッチフリー」に
MIFARE DESFire EV3はNXPのMIFARE 2GOクラウド・サービスに統合され、デジタル化されたMIFARE製品ベース認証情報の管理とNXPのエコシステムによるモバイル統合の簡素化を可能にし、NFC対応スマートフォン、ウェアラブルや他のモバイル機器へのスマートシティ・サービスのシームレスな展開が可能になるとしている。
また、セキュリティ機能との組み合わせにより、同ICは物品購入や交通運賃やパーキングの決済、オフィスやキャンパスの入退出、他の必要不可欠な都市サービスの利用などについて、より高速でセキュアな「オール・タッチフリー」の非接触型トランザクションを実現するとしている。
ソーシャルディスタンス環境下で重要性が増す非接触ICカード
NXPの副社長兼IoTセキュリティ、スマート・モビリティ担当ゼネラル・マネージャーのPhilippe Dubois氏は「MIFARE DESFire EV3の発表により、NXPはフォーム・ファクタに依存せず、従来のスマートカードやモバイル機器でも利用可能な新時代のコネクテッド・スマートシティ・サービスの基礎を築くことになった。同ICのセキュリティ機能は偽造や盗難の防止し、広範なアプリケーションをサポートする機能との組み合わせにより、多様なスマートシティ・サービスを管理する道を拓けるだろう。新型コロナウイルスの世界的影響によりソーシャルディスタンスを保つことが要求されている環境下で、非接触型トランザクションの必要性が増大しているので、広範な用途に向けた非接触型ソリューションを社会に提供できることを誇りに思う」と述べている。