LGの新しいスマートフォン「VELVET(ベルベット)」が海外で発表になりました。VELVETはデザイン性を重視した5Gスマートフォンですが、何よりもベルベットという製品名にセンスの良さが感じられます。VELVETはターゲットユーザーが30代の女性ということもあり、SoCにSnapdragon 765を採用することで10万円を切る買いやすい価格を実現。性能は必要十分として本体デザインのほうに注力した製品なのです。
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LGのスマートフォンはハイエンドの「G」「V」やミドルレンジの「Q」「K」など様々な製品がグローバル展開されています。しかしアルファベット1文字の製品名だらけでそれぞれの特徴はわかりにくくなっています。過去には背面を革張りにした「G4」なんてモデルもありましたが、外観よりもハイエンドスマートフォンとしてパフォーマンスに注目が集まりました。それもやはり製品名に特徴が無いため本当の良さをアピールしきれなかったからでしょう。
しかしスマートフォンが登場する以前は、LGはセンスあるネーミングの携帯電話を数多く出してきたのです。2000年代初頭のLGはサムスンと携帯電話の性能アップ競争に明け暮れていましたが、製品ネーミングに関してはサムスンを数歩リードしていたこともあったのです。今回はそんなLGのセンスに秀でた歴史を紹介します。
韓国メーカーがこぞって携帯電話の小型化を進めていた2000年代初頭、LGが投入した1台の携帯電話が世界中で話題となりました。それはブラックボディーの小さい携帯電話で、スライドボディーを閉じると前身が真っ黒、シルバーの四角い枠のみが見えるというスタイリッシュな携帯電話でした。2006年に発売されたその携帯電話の名前は「Chocolate」。チョコレートを思わせるそのデザインに多くの消費者が憧れを抱いたのです。
ディスプレイ下部にタッチすると、赤いLEDでタッチ式の方向キーが表示され、またスライドを引き出して現れる10キーはモノトーンの市松模様。携帯電話を道具としてではなくファッションアイテムのように持つことそのものが楽しくなる製品だったのです。その後はカラバリとしてホワイトも登場。通称「ホワイトチョコレート」と呼ばれるなど、LGのチョコレートシリーズは大成功しました。
翌2007年にはイメージを一新し、金属ボディーを採用した光り輝く端末「Shine」が登場します。ディスプレイ下に配置したバーは回転して画面スクロール操作が可能、その左右のソフトキーや10キーのバックライトはChocolateの赤から青へ。Chocolateとは全くイメージの変わるデザインを採用したことでこちらも大人気となります。
2007年はLGの他の携帯電話もChocolateに倣ってブラックボディー&赤LEDの組み合わせの製品も増やしていきました。さらにはあのプラダと提携した「PRADA Phone」を出したのもこの年です。ブランド名を明瞭に表したPRADA PhoneでLGの携帯電話に乗り換えたというセレブも当時は多かったことでしょう。ちなみにShineやPRADA Phoneの発表と同じ時期にAppleが初代「iPhone」を発表しています。
2008年にはより高級感を高めたモノトーンカラーの「Secret」を発売。故オードリー・ヘップバーンの映画のシーンをTV CMに採用するなど、女性を意識したデザイン端末として登場しました。ディスプレイのガラスはテンパーグラスで強化し、背面の電池カバーはカーボン製。黒の樹脂パーツはChocolateのような光沢仕上げではなく、革のようなシボ加工。大人の女性をターゲットにしたという点では、今のVELVETに繋がる製品です。
LGのこれらの製品は「Black Label Series」として展開され、LGの携帯電話のデザインセンスの良さを世界中に知らしめることに成功しました。しかしSecretが登場するころにはiPhoneの3Gモデルが登場、またAndroidスマートフォンも出てくるなど、携帯電話からスマートフォンへの転換が急速に始まろうとしていました。LGも大型タッチパネルを搭載した携帯電話を投入しながらAndroidスマートフォンの準備を進めることになり、Black Label Seiriesはこの3つで終わってしまったのです。
このようにデザインとネーミングセンスに高い評価を受けたLGの携帯電話の中には、カジュアル感を高めたものもありました。かわいい系ともいえる「Cookie」です。クッキーのように甘く楽しさを感じさせるカラフルな色合いを採用した携帯電話で、こちらは数モデルが発売されています。またAndroidスマートフォン時代にも1機種だけこのクッキーの名前を付けたモデルがありました。
その後主力端末がAndroidスマートフォンになると、LGは新ブランド「Optimus」を展開して次々と製品を出していきます。しかしサムスンの「Galaxy」ほどのブランド力をつけることができなかったことから、ハイエンド端末「Optimus Gシリーズ」からアルファベットだけを取り出して「LG Gシリーズ」として再スタートを切っていったのです。Gシリーズは一時は各社のハイエンドスマートフォンに並ぶ製品として常に注目を集めましたが、ここ数年は停滞してしまっているのは周知のとおり。チョコレートやシークレットといった、特徴的な名前を付けたスマートフォンを展開していたら少しは変わっていたかもしれません。
VELVETの基本性能や本体デザインは悪くなく、製品名をうまくアピールできれば停滞しているLGのスマートフォンビジネスを好転させる製品になるでしょう。日本への投入も期待したいものです。