政府は新型コロナウイルス治療薬の候補となっている抗ウイルス薬「レムデシビル」について、5月中に薬事承認する方向で調整に入ったと時事通信が伝えている。レムデシビルは近くアメリカで承認される見通しで、政府はこれを受け、早期の特例承認をする考えを明らかにした。
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「レムデシビルの『特例承認』に向けて作業を進めている」
ワクチン開発も進めば「重症者と死亡者を抑制することが可能になる」
早ければレムデシビルは5月中にも承認
レムデシビルが初の新型コロナウイルス治療薬として承認される見通しとなったが、少し不思議に思う人もいるのではないだろうか。つい先日までは「アビガン」の話題で盛り上がっていたはず。日本で開発されたアビガンが最も早く承認されると思っていた人は多いと思うが、なぜここへきてレムデシビルの承認が検討されているのか。そこには日本の複雑な仕組みがあった。
そもそもレムデシビルとはどのような薬なのか、今一度確認しておこう。レムデシビルはアメリカのギリアド・サイエンシズという製薬会社が開発中の薬で、エボラ出血熱の治療薬として知られている。
新型コロナウイルスには「重症の患者に効果がある」とされていて、CNNによるとレムデシビルを投与していないグループの致死率が11.2%に対し、レムデシビルを投与したグループの致死率は8.0%だったという。さらに、レムデシビルを投与した患者は回復期間が15日から11日に早まったと記事では伝えている。副作用としては肝機能の低下があるとされている。
一方、アビガンは抗インフルエンザウイルス薬として、日本の富士フィルム富山化学が開発中の薬で、俳優の石田純一さんや脚本家の宮藤官九郎さんが投与され、一定の効果があったことで知られている。主に「軽症の患者に効果がある」とされているが、胎児に影響を及ぼすことが副作用として挙げられている。
レムデシビルとアビガン、このどちらにも共通するのがRNAウイルスの増殖を抑えることで、これが新型コロナウイルスの抑制に効果があるのではと言われている。
では、なぜ今回レムデシビルが特例承認される見通しで、アビガンは特例承認されないのか。それはレムデシビルがアメリカで開発中の薬で、アビガンは日本で開発中の薬だからという理由がある。
アビガンが早期に承認されない理由
NHKによると、レムデシビルはアメリカやドイツで承認に向けての動きが先行していて、トランプ大統領も「安全にやってほしいが、できるだけ早く承認してほしい」と近く承認される予定。実はこれが重要で、薬の特例承認を行うには、海外で承認された薬が前提となるからだ。
レムデシビルはこれに合致するため、特例承認を受けることができ、早ければ5月中にも、初の新型コロナウイルス治療薬として承認される可能性がある。
一方、アビガンは日本国内で開発されているため、通常の審査を受けなければならない。アビガンは3月末から治験が始まったばかりで、終了予定が6月末。その後、データ解析をし、申請をして審査という流れになると、早くても承認されるのは年内いっぱいということになりそうだ。
毎日新聞によると、28日に行われた菅義偉官房長官の記者会見でも、「国際共同治験を実施してきたレムデシビルは間もなく薬事承認が可能になる見込みだ」とするも、「特例承認制度は海外で販売が認められるなど一定の要件を満たす医薬品が対象で、海外で新型コロナウイルス感染症に関して販売が認められていないアビガンに適用することは困難な状況だ」と新薬の特例承認制度を巡って説明している。
新型コロナウイルスの治療薬については、各国でよりスピード感を持って承認対応をしている。日本でも加速してきた初の治療薬承認に向けた動き。まずはレムデシビルが先頭を切って、5月中に薬事承認される見通しだ。
日本でのレムデシビルの効果は?
緊急時ということで、国内審査の手続きが大幅に簡略化され、承認されることになりそうなレムデシビル。全てがこれで解決されるわけではないが、どのような効果が出てくるかは注目する必要がある。ただ、どれだけ安定供給がされるかは未定で、当然だがまずは感染を防ぐことが第一となる。