製薬企業は、不足する情報を満たす存在になるのか?
「血液がん」は、多くの疾患・病型に分類され、分類毎の患者数が少ない疾患であるため、患者は、症状・進行度など患者自身の状況に当てはまる情報の入手が難しいと感じている実情がある。
インテージヘルスケアが「かながわ血液がんフォーラム」に来場した血液がん患者とその家族を対象に、「病気や治療の情報を入手するために頼りにしている情報源」や「製薬企業に期待すること」について調査した結果では、38%の患者が自身の状況を理解している「かかりつけ医(主治医)」を頼りにしていると回答している。
患者は自身の疾患・病型に有効な薬を開発する製薬企業に関心があり、大きな期待を持っている。しかし、製薬企業の発信する情報については、「不安感」があるなどの理由で、現状は不足する情報を満たす存在になっていないのが現状だ。
「不安感」の内容には、製薬企業からの情報が患者に届いていないことによる「理解の不足」が原因と考えられるものも。これらは、製薬企業にプロモーションの規制等があり、患者とのコミュニケーションが難しいことが一つの要因になっている。
しかし近年、製薬企業は、医学的または科学的な知識をベースに、中立的な立場で疾患や薬についての情報を発信することが、より求められるようになってきた。
今後、製薬企業からそのような情報が多く発信されることで、患者の「不安感」は次第に「安心感」へと変わっていくことが推察できる。その結果、製薬企業が不足する情報を満たす存在になる可能性は大きいだろう。
血液がん患者が治癒を目的に治療する場合、骨髄移植は最も有効な選択肢となる。骨髄移植は通常、強い化学療法を伴うため、患者本人の強い意志が必要な治療だ。
また同時に、移植に協力するドナーの存在が欠かせない治療であり、親族に適合者がいない場合は骨髄バンクに登録しているドナーが協力することになる。そのため、骨髄移植は薬による治療とは異なり、医療者や患者本人とそのご家族などの関係者だけでなく、一般社会全体に支えられた治療と言える。
「かながわ血液がんフォーラム」においても、ドナー登録の普及やドナー提供への感謝の気持ちを発信する場面が多くあったという。
このように血液がん患者は、一般社会との繋がりを特に大切にしようとするマインドが根底にあるのだ。
今回の調査結果において「医療保険財政に影響するほどの高額な薬価は受け入れにくい」との意見が複数あったのは、このような背景が理由と推察できる。
近年、CAR-T細胞療法など革新的な新薬において高額な薬価が話題になることがある。ただ、同じくCAR-T細胞療法の中にも、同種CAR-T細胞療法など、コストを念頭においた新薬の話題も出てきており、血液がん患者からの大きな期待が寄せられている。