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世界で2人目のエイズ完治例か、「HIV治療でウイルスがほぼ消滅」した患者が報告される

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は人間の免疫細胞に感染して破壊し、後天性免疫不全症候群(AIDS/エイズ)を引き起こします。エイズの完治は困難とされていますが、2019年3月に「2人目の完治例」とされる男性の存在が明らかとなっており、2020年3月には男性が身元を明かしてインタビューに応じ、抗HIV薬による治療を止めても体内からウイルスが検出されず、症状も現れない「寛解状態」が30カ月にわたって継続していることが明らかとなりました。

AIDSは非常に完治が困難な病気であることが知られており、多くの患者は抗HIV薬を用いた治療を生涯にわたって継続する必要があります。ところが、1995年にHIV陽性と診断されたティモシー・ブラウン氏は、2007年から2008年にかけてドイツのベルリンで特殊な手術を受けた結果、体内からHIVウイルスが検出されなくなった「HIV感染が治癒した世界初の人物」として世界的に有名となりました。

ブラウン氏が受けた手術は「HIV耐性を持つドナーからの造血幹細胞移植」というもの。HIVの感染には白血球の表面に存在するCCR5というタンパク質が密接に関わっていますが、中にはCCR5の一部が欠損しているため「本来であればHIVに感染するはずなのにHIVに感染しない」人々がいることが判明しています。AIDSの治療中に白血病と診断されたブラウン氏は、こうしたCCR5の一部が欠損しているドナーから造血幹細胞移植を行った結果、体内からHIVが検出されなくなりました。

結果的にブラウン氏はエイズが完治した人物として有名になりましたが、ブラウン氏が受けた2度の手術は非常に大きな危険を伴うものだったそうです。ブラウン氏以降にも同様の手術を受けた患者はいたそうですが、いずれもエイズの完治が確認される前にがんで亡くなってしまったとのこと。

ところが2019年3月、「造血幹細胞移植を受けたところHIVが体内から検出されなくなり、寛解状態が続いている世界で2例目の患者が確認された」とのニュースが世界中で話題となりました。ロンドンで手術を受けたことから「ロンドンの患者」と呼ばれたこの患者は、2019年の時点で体内のHIV量が検出不可能なレベルに低下しており、抗HIB薬による治療をストップする分析的治療中断(ATI)が18カ月間継続されていたとのこと。

HIVが寛解した世界で2例目の症例が報告されてから1年後の2020年3月、「ATIの継続期間が30カ月まで延びても、患者の体内からHIVは検出されていない」とする新たな論文が発表されました。この論文の発表と共に、「ロンドンの患者」が初めて身元を明かしてインタビューに応じています。

「ロンドンの患者」として知られていた患者はアダム・カスティリェホ氏といい、2020年の時点で40歳だとのこと。2003年にHIV陽性であると診断されたカスティリェホ氏は、2012年に白血病と診断されて化学療法を続けていました。そんな中、2016年にカスティリェホ氏は、ブラウン氏と同様にHIV耐性を持つドナーから造血幹細胞移植を受けました。



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