次世代移動通信システム「5G」は、現行の4G/LTEに比べ約100倍といわれる通信速度と、多数同時接続や低遅延といった特長を備えています。ここ日本でも今年・2020年から商用サービス開始が見込まれていますが、当初は4G/LTEのネットワーク基盤を利用する「ノンスタンドアロン(NSA、Non-Stand Alone)」でスタートします。
かんたんにいうと、ノンスタンドアロンは「4G/LTEの設備を流用するハイブリッドタイプの5G」です。5Gでは、新しい通信方式(NR、New Radio)で超高速通信を実現しますが、いくつかの理由から日本は既存の4G/LTE基地局を利用するノンスタンドアロンを選択しました。
その理由のひとつが、NRで使用される周波数帯の高さです。NRでは、6GHz帯以下の周波数帯にくわえ、24.25GHzから52.6GHzまでのミリ波帯を使用しますが、ミリ波帯は直進性が強く、建築物どころか人体や雨粒にすら影響を受けるというほどです。ノンスタンドアロンでは制御信号に4G/LTEを、データ送信にNRを利用することで、この問題を回避しているのです。
もうひとつの理由は、イニシャルコストとサービス開始までの時間です。NRだけで5Gのサービスを実現しようとすると、膨大な数のNR基地局を設置しないと広いエリアをカバーできないため、費用も時間もかかります。既存設備を流用できるノンスタンドアロンであれば、初期投資額も時間も圧縮できます。
なお、国や地域により5Gで使う周波数帯や運用形態には違いがあります。日本やアメリカの通信キャリアはノンスタンドアロンから5Gサービスを開始し、4G/LTE基地局に頼らない「スタンドアロン(SA、Stand Alone)」に順次移行する計画です。一方中国では、当初からスタンドアロンで5Gサービスを提供する通信キャリアがあるなど、日本やアメリカと状況が異なります。