性能が従来のリチウムイオンバッテリーの4倍で、スマートフォンなら充電して5日間使用可能、電気自動車なら走行距離が1000kmになるという新しいリチウム硫黄バッテリーをオーストラリア・モナシュ大学の研究チームが開発しました。
スマートフォンなどのように繰り返し充放電する用途には、一般的にリチウムイオンバッテリーが用いられています。リチウム硫黄バッテリーも一部の航空機や自動車で利用されてきましたが、カソード中の硫黄が充放電のサイクルの中で膨張・収縮により約78%の体積変化を起こし、容量低下や充電サイクルの短縮を招くという問題を抱えていました。
モナシュ大学のMahdokht Shaibani氏らは、カソードを体積変化に対応できるよう再設計。これにより、性能低下を抑えることに成功しました。その性能は、実にリチウムイオンバッテリーの4倍に相当するもので、200サイクル以上の充放電を経ても99%のバッテリー効率を維持するとのこと。
Shaibani氏は、硫黄は資源量が豊富であり、安価で手に入ることから、電気自動車をはじめとするバッテリーのコストを抑えられると語っています。このバッテリーは、数年以内の商用化を目指し、さらなるテストが行われることになっています。
なお、ニュースサイト・NewScientistでは、コンゴ民主共和国の子どもが鉱山労働者として掘り出しているコバルトがリチウムイオンバッテリーに用いられているのと同じように、リチウム硫黄バッテリーも硫黄の産出において同様の倫理的問題に直面する可能性があることを指摘しています。