台湾の商工時報(中国語電子版)はじめ複数のメディアが、昨年末から年始にかけて、Appleが2020年後半に発売するとみられるiPhone 12シリーズ4機種のすべてに新規設計かつTSMCの5nm EUVプロセスを採用したA14プロセッサ(仮)ならびにQualcommのSnapdragon X55モデムが搭載され、A14プロセッサは2020年第2四半期末までに量産が開始される予定であると報じている。
AppleはQualcommと長期にわたり裁判沙汰になっていたが、2019年に和解に至ったことから、iPhone 12シリーズにはQualcommの5G対応モデムチップX55が全面的に搭載されるという。Qualcomm X55はSub-6GHzとミリ波を同時にサポートできる5Gモデムチップであり、TSMCの7nmプロセスを用いて製造されるという。
これらの情報はTSMCのサプライチェーンからの情報に基づいている模様だが、TSMC自体は顧客情報を一切公表せず、顧客も製造委託先を明らかにしない方針のため、事実の確認はとれていない。
AppleとHuaweiが競い合う5nm EUVプロセス一番乗り
A14プロセッサは、TSMCの5nm EUVプロセスの当初の生産能力の2/3を占め、残り1/3がHuawei傘下のICデザインハウスであるHiSiliconが設計した5G対応スマートフォン向けプロセッサ「Kirin1000」が占める見込みで、AppleとHuaweiが5nmプロセッサで一番乗りを目指す構図は7nmプロセッサ開発の際と同じである。Appleは、A14プロセッサを全量TSMCに製造委託する見込みであり、質量両面でTSMCとの差を少しでも縮めようとしている韓Samsung Electronicsにとっては痛手だろう。一方、TSMCは、Appleだけではなく、Huaweiはじめ中国ベンダーの5G対応スマ-トフォン向けSoCの製造を一気に引き受け、さらにはIntelからもAIチップの生産を受託する見込みで、2020年は過去最高業績の更新が期待されている。
iPhone12は有機EL、廉価版は液晶パネル?
また、TSMCの2019年と2020年の設備投資は140〜150億ドルレベルに達しているが、これらは7nmの生産能力増強とリスク生産を始めた5nmの量産体制の構築を加速するために用いられる予定だ。Appleは、7nmプロセスを用いたA13 Bionicプロセッサを搭載した現行モデルに加えて、iPhone SEの後継機種と目される廉価版のiPhoneにもA13プロセッサを搭載して年内にも発売することが噂されており、TSMCの7nmプロセスに対する依存度は引き続き高いままであると思われる。
なお次世代iPhoneに搭載されるディスプレイに関しては、iPhone 12は、5.4インチおよび6.1インチの有機ELパネルを搭載し、上位機種となるであろうiPhone 12 Proは6.1インチ有機EL、最上位機種となる見通しのiPhone 12 Pro MAXは6.7インチ有機ELを採用する見込みであると商工時報は伝えている。また、台湾Digitimesによると、iPhone廉価版はこれまで噂されていた4.7インチ液晶パネル搭載の1機種のみならず、ディスプレイサイズの異なるもう1機種(5.4インチあるいは6.1インチ液晶パネル)も計画されており、名称もiPhone SE2ではなくiPhone 9になるだろうと伝えているが、真偽は不明である。