現代のIT関係者の間で当たり前のように使われている「プログラミング言語」という言葉の来歴について、ノーザン・アイオワ大学でコンピューターサイエンス学部の学部長を務めるユージン・ウォリングフォード氏が、調査結果をまとめています。
ウォリングフォード氏が、「プログラミング言語」という言葉が最初に使われたのがいつかを調べるきっかけになったのは、あるツイートがきっかけです。プログラミング言語LISPについて研究していたTwitterユーザーのCristina Videira Lopes氏は、古い文献をあたっていた際にLISPが「プログラミング言語」ではなく、「プログラミングシステム」と呼ばれていることに気づいたとのこと。そこで、Lopes氏はTwitterで「プログラミング言語がそう呼ばれるようになったのは、いったいいつからですか?」と投稿しました。
プログラミング言語という言葉の由来について心当たりがあったウォリングフォード氏は、さっそく過去の資料をあさってみました。そこで発見されたのが、「世界初の人工知能プログラム」と称されるプログラム「Logic Theorist」の開発者として知られるアレン・ニューウェルとクリフ・ショーが1957年1月に発表した論文「(PDFファイル)PROGRAMMING THE LOGIC THEORY MACHINE」です。この論文の序文には、プログラミング言語についての説明があることから、ウォリングフォード氏は「わざわざ定義されているということは、当時は『プログラミング言語』という言葉が浸透していなかったということを意味しています」と述べて、この論文が「プログラミング言語」という言葉を最初期に使用した例ではないかとの見方を示しました。
しかし、コンピューターサイエンスの歴史はウォリングフォード氏の専門外であるため、ウォリングフォード氏がより古い「プログラミング言語」の歴史を募集したところ、さらなる有力情報が寄せられました。コンピュータ・アーキテクチャなどに造詣が深いプログラマーのMatt氏はTwitterで、「計算機科学者のアーサー・バークスが1950年に『中間プログラミング言語』に言及しているのは注目に値するでしょう」と投稿して、「PROGRAMMING THE LOGIC THEORY MACHINE」より7年も早い「プログラミング言語」の使用例について情報提供しました。
Matt氏が示した(PDFファイル)資料は、1976年にスタンフォード大学の研究者らが発表したものですが、その26ページには「バークスは1950年に、後に内部プログラム言語の1つ上の階層となる、いわゆる『中間プログラミング言語』の概略を示しました」と書かれています。また、ウォリングフォード氏によると、バークスは翌年の1951年にも「プログラム合成の補助としての中間プログラム言語(An intermediate program language as an aid in program synthesis)」という題の論文を発表しているとのこと。
さらに、ウォリングフォード氏の元には「IBMが1956年に作成した、世界最初の高水準言語であるFORTRANの(PDFファイル)マニュアルには既に、『プログラミング言語』という言葉が普通に使われている」という情報も寄せられました。これらの情報からウォリングフォード氏は「1951年から1956年の間に、誰かが『プログラミング言語』という言葉を生み出した可能性があります」と述べて、具体的な特定は困難だったものの、「プログラミング言語」が使われ始めた年代を絞ることには成功したと総括しました。