【ニューヨーク=西邨紘子】米食品医薬品局(FDA)は2日、果物やお菓子、ミントなどの香料を使用したフレーバー付き電子たばこ製品に関する規制の枠組みを発表した。30日以内に販売を中止するよう求め、その後は当局が承認した製品のみ販売を認める。フレーバー製品は未成年の使用率が高く、ニコチン依存のまん延を招いていると批判が集まっていた。
カートリッジ型電子たばこ最大手のジュールは19年にフレーバー製品の販売を中止した=ロイター
画像の拡大
カートリッジ型電子たばこ最大手のジュールは19年にフレーバー製品の販売を中止した=ロイター
FDAが規制するのは液体の入ったカートリッジを装着するタイプの電子たばこで、業界最大手ジュール・ラブズの製品などが含まれる。たばこ味とメンソール味の製品のほか、使用者が自分でフレーバーを加えて味わいを変えられる「オープンタンク」型の電子たばこは、未成年の使用が少ないとの理由で規制の対象外とした。
米疾病予防センター(CDC)の調査によると米国で電子たばこを吸っている中高生は2019年に500万人超にのぼり、その多くがカートリッジ型のフレーバー製品を使っていた。FDAを管轄する米保健福祉省のアレックス・アザール長官は「若年層への電子たばこまん延は、米国の薬物使用の歴史でも過去に例のないペースだ」と今回の規制の背景を説明した。
ニコチンなどを含む液体を加熱し、その蒸気を吸引する「ベープ」と呼ばれる方式の電子たばこは2000年ごろに登場し、米国では過去5年ほどで使用者が急増した。これまで液体の成分などに対する規制はなく、さらに16年までは未成年への販売もほぼ黙認されていたことがまん延を招いた。
未成年の電子たばこ使用問題への注目が高まったのは19年9月以降、米国で電子たばこ製品使用による急性肺疾患の報告が急増したためだ。これまでに2500人が入院、50人が死亡した。CDCは19年12月、急性肺疾患の原因物質を大麻成分を含む電子たばこに添加物として使われていた「ビタミンEアセテート」と特定した。
トランプ米大統領は19年9月、急性肺疾患の増加を受けてフレーバー付き電子たばこの販売について「数週間以内に全面的に禁止する」といったん表明したが、その後は「電子たばこを禁止すれば、(より害が大きいとされる)紙巻きたばこの使用者が増える懸念がある」として規制に消極的な姿勢を見せ始めていた。
電子たばこ製品の規制強化を巡っては、喫煙者が「#WeVapeWeVote(電子たばこを使用し、投票する)」と銘打った反対キャンペーンを繰り広げており、政府が電子たばこの全面禁止に踏み込まなかったのは大統領選への悪影響を懸念したためとの見方もある。