国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の超低高度衛星技術試験機「つばめ」が、「最も低い地球観測衛星の軌道高度」としてギネス世界記録に認定された。
・人工衛星にとって未開拓領域
超低高度衛星は、小さなセンサを用いて高解像度の衛星画像を取得できることが特長だ。
これまで、「超低高度」と呼ばれる300kmより低い軌道では、大気抵抗や衛星材料を劣化させる原子状酸素の密度が高くなるため、精密な姿勢・軌道制御や長期間の衛星運用が求められる地球観測衛星には不向きとされていた。
今回ギネス世界記録に認定された「つばめ」は、JAXA が開発した超低高度軌道を利用する世界初の地球観測衛星人工衛星。燃料効率と長時間の作動に優れたイオンエンジンとRCS(衛星を予定軌道・姿勢に修正するための推進系装置)を併用することで、大気抵抗が大きな超低高度における軌道保持に成功。また、原子状酸素に強いコーティングを施すなどの対策を行った。
・167.4 kmで7日間の軌道保持
2017年12月に打ち上げられ、2019年10月に運用を終えた「つばめ」のサイズは、2.5 m× 5.2 m× 0.9m、重量は383 kg。
「つばめ」は271.5 kmで軌道保持したあと、軌道高度を7段階で下げていき、最終的にギネス認定の世界記録となった167.4 kmで7日間の軌道保持を行い、高解像度の衛星画像取得実験で良好な画質の画像を取得した。
また、大気密度や原子状酸素の密度、大気に曝露した材料サンプルの劣化状況などのデータを取得し、JAXAが開発した材料が長期間の原子状酸素の曝露に耐えることも実証。
JAXAは、「つばめ」で得られた成果を今後の超低高度衛星の設計に反映させ、科学技術の発展につとめていく意向。