Appleストアオンラインでは、およそ1ヵ月待ちという人気のAirPods Pro。価格3万24円
2019年12月時点でも、Appleストア オンラインではおよそ1ヵ月待ちという人気のAirPods Pro。もともと好調だったAirPods(第2世代)にノイズキャンセリング機能を備えた、フルワイヤレスイヤホンだ。今回は、このAirPods Proについてのレビューをお届けしたい。とはいえ、発売からゆうに1カ月以上が経過し、今さら感にもほどがある。と、そうした声が聞こえてきそうだが、どうしても注目していただきたいことがあったのだ。
それは、音ゲーでどれくらい使いものになるのか、ということ。
筆者は、昨年から『バンドリ! ガールズバンドパーティ(ガルパ)』というスマホゲーにドハマりしている。ASCII.jpの読者にとっては、『ラブライブ! スクールアイドル フェスティバル(スクフェス)』や『アイドルマスター シンデレラガールズ(デレステ)』といったタイトルが音ゲーのおなじみであろう。
いずれも二次元のキャラクター群が登場するものだけど、ガルパはそうした二次元アイドル系音ゲーでは後発となる、2017年3月にリリースされたごく最近のゲームだ。スクフェスは6年前、デレステもアイドルマスターシリーズとして14年も経過していることにくらべ、ガルパはリリース後わずか2年半しか経過していない。
しかし、この短期間ながら219曲をリリース(2019年12月2日現在)しており、スクフェス(約210曲)、デレステ(約230曲)に肩をならべる規模に成長している。11月にはApp Storeのトップセールスランキングで1位を獲得。12月にはユーザー数が1100万人を突破している。この数値が、ダウンロード数ではなはくアクティブユーザー数というのだから驚きだ。まさに、2019年のキング・オブ・音ゲーといえるだろう。
このバンドリで、AirPods Proはどれくらい使い物になるのかをお伝えしたい。
音ゲーではケーブル付きで我慢するしかないのか?
ガルパを日常的にプレイするにあたって、非常にわずらわしいと感じていたのが、イヤホンのケーブルだ。
iPhoneでプレイする際、ホールドして親指でノーツ(リズムに合わせて登場するポインターのこと)をタップするというスタンダードなスタイルでプレイしているが、激しい連打の際にケーブルがぶらんぶらんと揺れまくって、めちゃくちゃ気になるのだ。
また、ゲーム中は本体のバッテリー消費が激しい。さらに、スクリーンレコード機能を使って録画しようとなれば、iPhone 11 Proであってもみるみるバッテリーが減っていく。このとき、有線イヤホンがLightningコネクタを占有するので、充電しながらプレイすることができない。
充電しながらイヤホンを挿せるタイプのアダプターが販売されているものの、接触が不安定であったり、位置どりが悪くプレイしにくかったりして、まだこれといった製品に出会えていないのが現状だ。
筆者が試した充電しながらイヤホンが使える製品のうちひとつ。たしかAmazonで購入したもの。ゲームプレイ時に横位置で持つと、力が入ったときに傾いてしまうのか、接触が安定せず使い物にはならなかった
「じゃあワイヤレスイヤホン使えばいいじゃん」となるのだが、音ゲーの場合はそうもいかない。ワイヤレスはケーブル直結にくらべて情報の伝送量が格段に少ないので、本体で音声信号を圧縮(エンコード)し、イヤホン側で伸張(デコード)する。この間、わずかながら遅延が発生する。
ほんとうにわずかな時間だが、音ゲーではこの遅延が痛い。
ガルパでは180~200BPMの曲が大半を占めている。BPMとは、曲のテンポを示す単位で、数値が大きいほど速いテンポの曲ということになる。
仮に180BPMの曲であったとすると、16分音符の間隔は83.3ミリ秒。つまり、83.3ミリ秒ずれると画面へのタップと音が合わず、リズムに違和感を覚えはじめる。166.7ミリ秒以上ずれるとなれば、相当な慣れが必要になるはずだ。
ガルパでもっとも速い楽曲は『GO!GO!MANIAC』の250BPM。これだと60.0ミリ秒で16分音符ひとつ分ずれてしまうので、こうしたテンポの速い楽曲にとって音声の遅延は致命的。
先頃、ゲームデバイスメーカーのRazerは、低遅延60ミリのワイヤレスゲーミングイヤホンを発表した。しかし、それでも遅いという、とてもシビアな環境を求められるのが音ゲーの世界だ。ちなみに、画面表示にたとえると、60.0ミリ秒は60fpsのうち3~4フレーム分に相当する。
また、音ゲーではワイヤレスイヤホンの利用を想定して、音のずれをゲーム内で調整できる機能を持つものが多い。ガルパにも、もちろんこの機能が実装されている。しかしながら、調整で数値を大きく変えると、タップした際のリズム音と、実際の音楽のタイミングが大きくずれて、逆にプレイに集中できなくなってしまう。
それゆえ、音ゲーは有線イヤホンでのプレイが基本。というのが、音ゲーマーの常識となっていた。
こうした状況の中で、AirPods Proに注目していたのには理由があった。2019年1月に発売されていたAirPods 2は、H1チップを搭載することで前機種より遅延を30%ほど低減している。AirPods Proにも同様にH1チップが搭載されていることから、音ゲーのプレイにも耐えるのではないか、と予想していたのだ。
難易度HARDまでなら問題ないが……
ガルパは、「EASY」~「EXPERT」まで4段階(楽曲によっては「SPECIAL」を加えた5段階)の難易度を選ぶことができる。
さらに、ノーツ数が多かったり、スライドやフリックといったテクニックを多様するものなど、同じ難易度でも微妙に難しさが異なるため、楽曲ごとにさらに細かな指標が「楽曲レベル」として設定されている。
楽曲レベルは数値が高くなるほど高難易度となっていて、最高値は5~29まである。AirPods Proを購入して、実際にEXPARTの楽曲レベル24~25あたりの曲をプレイしてみると、遅延を感じながらも設定の変更なく普通に遊ぶことができた。
著しい違和感を感じ始めたのは、EXPERTのレベル26の楽曲をプレイしてからだった。筆者はレベル26~27の一部の楽曲は、ミスなくフルコンボを取得できるほどの腕前。しかし、レベル26の多くの曲で、ノーツの取りこぼしが目立ちはじめた。
有線の「EarPods with Lightning Connector」ととっかえひっかえしながら気づいたのだが、AirPods Proではわずかに遅延があるようだ。聴覚と視覚だけでは、具体的にどれくらいの遅延があるのかわからないので、実際に調べてみることにした。
iPhoneの内部音声とAirPods Proの出力音声の遅延を計測
まずは、iPhone 11 Proのスクリーンレコード機能を利用して、プレイ動画を撮影。iPhone内部での動画エンコード処理時に音がずれている可能性は否めないが、現状はHDMI出力を録画する方法と比べても内部音声の遅延を最小にして録画するにはもっとも適した方法となる。