毎回買ってる。だけがファンじゃないわけです。
ギズモードは昨年末、「iPhone2台以上買った人の会」と題して、iPhoneを1年に複数台買ってしまった人々による座談会を行ないました。そんな1人2台も買ってしまうような編集部なのですが…今年はなんと! iPhoneを買った人がギズモード編集長を除きゼロ!
あんなに普段iPhone! あいふぉーん! って言ってるのにどういうこっちゃ…。と思われるかもしれませんが、僕らは僕らなりに考えもあったんです。
というわけで、今年は逆に「iPhone買わなかった人の会!」と題して、なぜ買わなかったのか振り返り、さらには2019年のAppleがどういう状況なのか考察しました。
2019、iPhoneスキップボーイたちの「買わなかった」理由
山本:じゃあ、今年もApple座談会をさせて頂こうかなと思います。実は去年みなさんにも出てもらった「iPhone2台以上買った人の会」、けっこう評判が良かったんですよ。Twitterのコメントでも賛否のコメントもいろいろ頂きまして、今年もやろうみたいな話になりました。というか、僕が有休で会社にいないときの会議で決まっていた(笑)。
照沼:去年のやつ、頭おかしいやつらの集まりみたいなコメントがあるよね。
綱藤:去年のは確かにそうでしたね…。
山本:だから今年は、去年たくさんiPhone買った人たちが、なんで今年はまったく買わなかったのか、どこに理由があるのか探ろうかなと。ただ、そういう話だけだと、ちょっと暗い会になる可能性もあるので、「買わなかった人たちが今のAppleをどう見ているか」みたいなところも明らかにしたいっていう裏テーマもありますね。じゃあよろしくおねがいします!
話す人
照沼健太:ライター・カメラマン
今使っているiPhone:iPhone X
(昨年はiPhone XSとXS Maxを買い、結局手放した)
綱藤公一郎:ギズモード編集部
今使っているiPhone:iPhone XS Max
山本勇磨:ギズモード編集部
今使っているiPhone:iPhone X
(昨年はiPhone XS MaxとXRを買い、結局手放した)
小暮ひさのり:ライター・この記事を書いている・たまに出てくる
今使っているiPhone:iPhone 11 Pro Max
ライター・カメラマン照沼の「iPhone買わなかった理由」→ライカ
山本:まず照沼さんから買わなかった理由を教えていただいていいですか。
照沼:僕、今年は本当に買うつもりだったんです。去年は2台買ったけど、なんだかんだですべて手放してしまったんですよね。だから、さすがに2年も同じiPhoneを使うのは初めてだったし、3年目に入ったなら、そりゃ換えるよな…。と思ってはいたんです。ところが、いざ買おうと思ったときに、いや待てよ…と。別にiPhone Xで困ってねえぞ。ってことに気付いたんですよ。
山本:買おうとする気持ちは動いていたのに、ですか?
照沼:そう、ちょうど手持ちのiPhone Xを売って新しいのを買おうと思ってたけど、AppleCareで割れたガラスを交換してもらったんですよ。そうしたら、ぴかぴかになって帰ってきた。きれいだし性能的にも困っていないんですよ。バッテリーの持ちとかもあるので、買い替えたほうがいいかなと思いつつ、ずるずるとこのまんまって感じです。
山本:ぶっちゃけ、過不足なかった、みたいな。
照沼:そうですね。iOS 13、12ぐらいから前のモデルでもさくさく動くようになったじゃないですか。なおかつ、ちょっと性能は落としてバッテリーも持つようにOSも調節してるから、普段の生活で重いなって思うことが、Lightroom使って現像してるときぐらいしか感じない。
山本:Lightroomいじるんですか、iPhoneで。
照沼:たまに。あともうひとつiPhone Xを買ったころと比べて違うのは、ライカを持ち歩くようになったから。そうなるとこのカメラ(iPhoneのカメラ)、どうでもいいんですよね。撮れりゃいいっていう。
全員:あぁ…(納得の声)
山本:逆にそれまではカメラを期待してiPhoneを買っていたんですね。
照沼:やっぱりiPhoneのカメラいいなって、毎回買うたびに思ってましたね。iPhoneの満足度って、最初はRetinaディスプレイがすごいとか、16対9になったとかありましたけど、だんだんカメラの比重が高くなっていってるのは間違いないと思います。
山本:照沼さんって、カメラをずっと持ち歩いてるから、意外とカメラ画質は気にしない方なのかと思ってたんですけど。
照沼:いや、実は「GR II」を買うまであんまりカメラ持ち歩かなくて。キヤノンの「5D」、「6D」とか、ソニーの「α7」とかって、プライベートで持ち歩くには、ちょっとまだ仕事感あるじゃないですか。結局、レンズ含めるとでかくなる。だから、本気で撮りたいときは持ち出すけど、それ以外のときはiPhoneカメラで撮って、ちょっとLightroomで加工するぐらいで十分じゃんって思ってたんですよ。でも「GR II」を買ったのがきっかけで、カメラをどこにでも持っていくようになって。
山本:で、そこからライカへ…ですもんね。ライカ持ってたら、関係なくなっちゃうのもわかります。
編集部・綱藤の「iPhone買わなかった理由」→OSMO Actionが楽しすぎた
山本:綱藤さんは去年iPhone XS買ったからっていう理由ですか?
綱藤:そうっすね。俺は2年おきに買っていたから、iPhone Xは買ってるんですよ。だから、iPhone XSを買ったのが予定外だった。
照沼:それ(XS Max)はなんで買ったんですか?
綱藤:これはギズモードに入ったノリで買ってしまった。
山本:良くないやつ(笑)。
綱藤:8月に入社して、9月に発表だったから、そのノリだったんだけど、結果的にMaxはすごい良かった。たまにでかいなと思うことあるんだけど、小さいiPhoneを触ると物足りなくなるぐらいになっているので、次買うとしてもMaxサイズを買うかなと思ってますね。
山本:じゃあ性能的に今年のiPhoneは惹かれなかった?
綱藤:いや、実は今年も買っちゃおうかなと思ってたの。3つ目のカメラがあって、広角が撮れるのが単純に便利さがよさそうで。でも、よくよく考えたら僕今年「OSMO Action」を買ったんだよね。その体験が好き過ぎて、あまり広角が増えたことに対して魅力を感じなかったっていう感じかな。
山本:じゃあ綱藤さんも、結論としては照沼さんと一緒で、メインアップデートのカメラに関しては、別のカメラ持ち歩くからいらないっていうことですよね。
綱藤:そうだね。カメラぐらいしか欲しくなるポイントがなかったわけだけど、そこにときめきはなかったかなぁ。チップとか良くなってるのはわかるんだけど、わかりやすい体験として変わるほどじゃないかなと。
編集部・山本の「iPhone買わなかった理由」→周辺機器の年だから
綱藤:山本くんは、なぜ今年スルー?
山本:スルーしたときはとくに意識してなかったんですけど、iPhone XS以降、iPhoneを毎年買い換えることだけが、Appleを信仰することではないなと感じてて…。
綱藤:山本くんは「信仰する」から1つ上のレイヤーへ移ろうとしている?
山本:いや、プライベートでは信仰するスタンスではいるんです。でも、それはiPhoneを買うよりももっとAppleを楽しめる方法があるんじゃないかと。だから今年はなるべく周辺機器を買うようにして、Apple Watchのステンレスモデルを初めて買ったし、HomePodも買ったし、第二世代のAirPodsもAirPods Proも買いました。今年は周辺機器の年だなと思って、スルーしたって感じですかね。
照沼:でも一番アガったのはやっぱりAirPods Proですよね。
山本:そりゃあ、やっぱりAirPods Proでしょう。僕としてはAppleがしてほしいお金の使い方をするのが好きなところがあるんです。
照沼:Appleがしてほしい使い方?
山本:Appleが望むお金の使い方をしてあげるっていうのが。
綱藤:信者のかがみですね…。
山本:ここら辺はちょっと気持ち悪いのでカット。
照沼:いやいや、入れたほうがいい。
綱藤:山本くんは 、「こいつ、きもい」ってコメントが付くのが楽しいのでは?
買わなかった人から見て、今年のiPhoneのデザイン・カメラどうですか?
山本:でも今年のiPhoneって、少なくともプロダクトデザインは変わったじゃないですか。バックパネルがすりガラスになったり、ついに背面から「iPhone」の刻印が消えたとか。それに対する感想を聞きたいんですけど、買う動機にはならなかったんですか?
照沼:デザインはマットになったのがいいなと思ったのと、よくタピオカとかいわれてるけど、別にそこはなんも感じない。むしろかっこいいんじゃない?と思う、ミリタリーっぽくて。
山本:それはミッドナイトグリーンがですか?
照沼:グリーンのカラーも含めて、本体のデザインもだね。「ロケットランチャー」とか「ボトムズ」とか言われてるけど、そういうのも含めて全体的に実用品というか、変に気取ってない印象で良いなと思う。まぁ、その反面で「じゃあなんでサイドは光沢なんだろう」みたいなのは感じますけどね。高級感のためではあるんだろうけど、「Pro」といって割り切るんだったら、全部マットでも良かったんじゃないかなと。
山本:初めて実機を見たとき、ちょっと違和感を感じましたよね。結局カメラの位置って正解だったんですかね?
照沼:どうですか、使ってて。(iPhone 11 Pro Max所有のライター小暮に話を振る)。
ライター小暮:使っててですか? 画角の差を見るに、縦イチ配列とか横イチ配列よりは適しているんだと思う。つまり、この3つのカメラの距離が等間隔であることがすごい大事だと思うんだよね。広角から通常にシームレスに移行できるようになったり、プレビューで見ている以外の領域も実は広角で撮っていて後で切り替えられる、みたいなのはこのデザインだから実現したのかなと。
照沼:確かに、言われてみればそうですね。L字に並べても駄目ですもんね。
小暮:そうそう。でもこれ、使ってみて初めてわかるところかもしれない。
照沼:とはいえ、やっぱりデザインが変わったとはいえ、基本的にはiPhone XSの流れですよね。これまでのメジャーアップデート感は薄いのかなっていう。
照沼のAppleの見方。インフラになったApple、「iPhone X」が示した結果
山本: 照沼さんが書いた記事「スティーブ・ジョブズとジョナサン・アイヴの夢は、永遠の環の中に完結した。iPhone 11に寄せて」が今年1番好きなAppleの記事なんですけども、プロダクトから読み取れる最近のAppleってどう変化してきていると思いますか?
スティーブ・ジョブズとジョナサン・アイヴの夢は、永遠の環の中に完結した。iPhone 11に寄せて
照沼:Macを主力にしていた時代のAppleって、10人いるとしたらその1人か2人ぐらいが使ってるみたいなプロダクトだったけど、それがiPod、iPhoneで一気に覇権を握ったわけじゃないですか。そうなってくるとAppleの立ち位置が変わってくるのは当然だよなっていう。むしろ社会に対する責任が出てきますよね。Windowsって昔からインフラ感があったけど、Appleにもそういう側面が出てきた。
そうしてAppleがインフラになるっていうことは、やっぱりスタンダード感を出さなきゃいけないし、誰でも使えるようにすることが課題になると思うんです。iPhoneなら、新しいモノ好きのためだけじゃなくて、そういうのが得意じゃないお客さんにも親切じゃないといけない。結果、やっぱりエッジーなものは薄まっていくだろうし、1つの基準を作ってちょっとずつアップデートしていくみたい方法は、やっぱり王者としてはやんなきゃいけないことなんだろうと思うんですよね。
山本:その1つの基準がiPhone Xだったっていう。
照沼:そう、iPhone Xだった。またXで次の10年をつくる、みたいなフレーズを打ち出したじゃないですか。でもそれは嘘じゃないんだろうなって。
山本:だから今の緩やかなアップデートは、それが適切でしかるべき対応だと。
照沼:だと、僕は思っています。今回のアップデートではなかったけど、次のモデルではベゼル、ノッチがなくなる説や、画面に指紋センサーが付く説などもありますよね。そういうふうに、次第に画面だけのハードになっていくのかなと思ってますね。
今年のAppleを象徴する「サービス発表会」と「MacBook Pro 16インチ」
山本:話をiPhoneに戻しますが、みなさんが買わなかった理由は、iPhoneの他にカメラを持ち歩くからという理由が大きいと思うんですが、Appleとしても「AppleはiPhoneだけじゃない」ってスタイルになっていますよね。それを強く感じたのが、今年の3月の「It's show time」イベントじゃないですか? やっぱり、あれはエポックでしたよね。
綱藤:Apple Cardとか出た発表だっけ?
山本:そうです。あのときに、iPhoneはAppleのサービスや周辺機器を使うためのものであって、もう毎年買わなくていいんだなと悟って。それに、今年はiPad Proを更新しなかったじゃないですか。
照沼:確かに、言われてみれば。
山本:そのサービスに舵を切った影響かもしれませんが、反対にプロダクト側も今までと違う年だったとすごく感じてて。円筒状のMac Proをやめたり、MacBook Pro 16インチもバタフライキーボードは廃止したり、iPhoneも厚くしてバッテリーを増やしたり、今までのAppleが好んでいなかったトレードオフを結構してきましたよね。そこに対して、Appleファンの中として是が非か、っていう問題はあると思うんですよ。そこら辺、どうですか?
照沼:やっぱりiPhoneが象徴だと思うけど、今年はPro製品と、Proじゃないところをめっちゃ分けてきてるじゃないですか。
山本:なるほど。
照沼:だから、今回、ティム・クックが来日したときも、やっぱり星野源とか、樋口真嗣とか、クリエーターたちとめっちゃ積極的に会ってるじゃない? コーディングしているめっちゃ頭いい子どもたちと会ってるわけじゃないですか。その辺はつくる人向けのMac、消費するためのノーマルのiPad、その中間にiPad Proみたいな、線引きをしてきたのかなっていう感じは、僕の中では感じます。
山本:ふに落ちる意見ですね。
照沼:16インチなんかその象徴でもありますよね、たぶんね。
山本:ということは、バタフライキーボード廃止についてどうこう言われること自体がお門違いだったかもしれない(笑)。
照沼:でもやっぱり、Appleファンとしては必要なくてもMac Proは欲しくなっちゃうよね。
山本:そうですね。必要なくても欲しい。
照沼:そこに、手の出せない値段で出されると、もうふざけんな、みたいな感じは生まれてるんだろうなとは思う。
綱藤のAppleの見方:Appleのエコシステムにハマると快適で出られない!
山本:綱藤さんと話していると、よくMacとiPhoneの連携とか、iCloudとか、Appleのエコシステムの話をするじゃないですか。そこら辺の状況って今どうですか?
綱藤:個人的にAppleでテンション上がったのは、HandoffとかAirDropとかContinuityとか、iCloud Driveもそうだけど、あの辺が出てきたときが一番楽しかったよね。MacとiPhoneは別々のものと思っていたけど、それらがきっかけにどんどん繋がっていった気がする。
だからエコシステムの文脈だと、今一番求めてるのはApple TVの新しいやつ。今は「Apple TV 4K」の一世代前のやつを使ってるんだけど、多分それが家で一番使ってるAppleデバイスなので、そのハードウェアを新しくして欲しい。
照沼:それは、ネトフリ(Netflix)とかを見てるってことなんですか?
綱藤:ネトフリも見てますし、あと普通にAirPlayでiPhoneから飛ばしたりですね。もう本当、コンテンツを消費するのは全部Apple TV上でやってる。
照沼:やっぱり画面がでかいほうがいいっていうこと?
綱藤:そうですね。本当にAirPlayはすごく出来がいい。Fire TVにもたぶん同じ機能があるんですが、そのシームレスさが違うっていうか。複数人のiPhoneから切り替えて使う状況であっても、本当にストレスがない。
山本:一人暮らしをしていると、あんまりその実感はないかも。
綱藤:ハードウエアもエコシステムも、進化のロードマップがちゃんとAppleの中に、結構先まであるような気がして、その安心感はすごくありますよね。ほら、Googleとかってすぐやめるじゃん。
山本:Stadiaのあの記事ですね。
綱藤:うん。失敗を切り捨ててきた歴史があるって話。一方でAppleは進行は遅いけど、ちゃんとロードマップどおりに動いてて、開発のライブラリとかもすごい綺麗に整っていて。「だから今、この機能が実装されたんだな」っていうのがわかる。
山本:たとえば?
綱藤:たとえばWWDCの発表は、去年こうだったけど、これがこれがこうなったんだ。みたいなのが、すごいきれいに見えるという、安心感は他と違うかなって。
でも、実はAppleにあらがいたい気持ちもあるんだよね。Appleエコシステムの囲い込みから抜け出したいんだけど、結局Appleの環境が一番快適。余計なこと考えなくていいし、本当にやりたいことまでスムースに進むのがAppleのいいところなんだろうね。
山本:じゃあ綱藤さんがいまApple製品を買う動機は、やっぱりそこになってくるんですか?
綱藤:そうだね、本当にエコシステムに入るためのお布施っていう。
山本:お布施がゴールという。結局、宗教じみてるじゃないですか(笑)。でも、確かにあらがいたい、みたいなのはすごくわかりますね。
綱藤:わかる? だから、自分の中で一番テンションが低いプロダクトはiPhone。でもApple Watchのテンションの高さがすごいから、結局iPhone。
山本:まんまとAppleの思惑にはまってますね。だからApple CardとかApple Arcadeのサービスも、Apple WatchとかAirPodsの方向性と同じなんですよね。
綱藤:そうそう。結局Appleの環境にハマるとiPhoneしか使えないっていう(笑)。
山本:最近のiPhoneは、AirPodsとかHomePodの母艦でしかないんですよね。それはAppleも望んでいることではあるとは思うんですけど。
照沼:それ、面白いですね、一昔前まではMacが母艦だったけど、iPhoneが母艦なんだ。でもこれは完全にAppleが正解ですよね。シェア何割しかないMacを母艦にするんじゃなく、iPhoneを母艦にする。で、iCloudでつなぐ。あぁiCloudやって良かったっていうことになりますよね。
綱藤:どこからでも入っていけますもんね、全然Apple製品使ってなくても、Apple Watch使いたいだけで、全部Apple製品にしちゃいそうになりますし。
山本:でも、そういうことなんだろうなと思って。それこそ、綱藤さんがあとでしゃべってくれると思いますけど、エコシステムのところで、AirPodsとかHomePodとかのほうが今楽しいなって思っちゃいましたね。でも、Appleがやってることってすごい効率悪いというか、なんだろう…マンパワーですよね。全部のラインナップをそろえて、もう全部、手作業でつなげていくような感じがして
照沼:やっぱり基本的にあの会社は人間、マンパワーの会社だと思いますよ。Apple MusicとSpotifyも、やっぱりそこが違うし。Apple Musicのほうが、中のスタッフの人が手作業でいろいろやってるっていう。
山本:でもそれって、すごいいい意味で効率悪いから、お金ない企業は真似できないんじゃないかなと。
照沼:やっぱりあのオフィスが象徴しているんだと思います。これからの時代は、もっと誘導的な人材採用をすべきだっていう人から見ると、あれが古くさいオフィスに見えるっていう話はあったし。
綱藤:それは丸いからですか?
照沼:丸いとか、巨大なところに人を全部集めるみたいな考え方じゃないかな。
照沼:MobileMeからずいぶん遠いところにきたなという。そのころに戻れるなら借金してでも株買いたいぐらいですよね(笑)。
山本:すごい財産になってますよ(笑)。
これからのAppleの観察の仕方
山本:でもこれからのAppleをどうウォッチするのかっていうのは難しいですよね。iPhoneの発表会を見たあとに記事を書いたんですけど、もうAppleのことをすごくイノベーティブな企業として見るのは、ちょっと違うのかなって。
iPhone 11 Proの発表会は本当にモヤモヤした。でもなんで買ってしまうんだろう
綱藤:また変な感じで悩み始めたね。たとえば?
山本:照沼さんがおっしゃるように、インフラ化した企業にとって一足飛びな進化って逆に無責任だと思うんです。だからある意味ベンチャー的な小さい企業のほうが新しかったり、面白かったりすることが多い。
そういう意味では、プライベートで「Apple凄い!」っていうのは自由だと思うけど、テックの編集者として「Apple凄い!」っていうのは、ちょっと本来の新しさからはズレてくるのかなと。どう折り合いつけるべきだと思いますか?
綱藤:いや、求められてもなぁ。ギズモードはテックメディアじゃありませんって言えばいいんじゃない?
山本:う〜ん。ギズモードって、超個人的な意見を書くから、楽しんでもらえているってところがあったじゃないですか。でも今って、SNSとかでそういうのはみんな発信できるし、ギズも大きくなっちゃったし、このままApple好きです!ってずっと言い続けるのってどうなんだろう、みたいな葛藤が…。
照沼:でも、Appleがわりと軸にありつつ、ほかになんのブランドが好きか?みたいな感じになるんじゃないかなって気はするね。Appleのこと好きなのは全然いいと思うんだけど、褒め称えるというか、監視するぐらいの感じになるんじゃないかなっていう。
山本:そうなんですよね。なんか今さらiPhoneのこと褒める記事書いてもなぁ…って思いますね。
照沼:そう。Appleとテックメディアの関係は、政府の動きを監視する大手新聞社とか、そういうノリになるんじゃないかな。
ではみなさん、来年のiPhoneは…買いますか?
山本:じゃあ、今年はiPhoneをスキップしたわけですが、来年はどんなiPhoneだったら買いますか? というか、来年iPhone買います?
照沼:さすがに買いたい。
山本:さすがに、いや、僕もさすがにという感じ。
照沼:でもやっぱり、ノッチがなくなる噂は楽しみ。あと、Touch IDをもう一度使いたい。
山本:綱藤さんは…「iPhoneだけだよ!」ですか?(未だにLightningケーブルを使っているのがiPhoneだけなのを指摘する持ちギャグ)
綱藤:そうね(笑)。Type-Cになったら欲しいけど、AirPodsもType-Cにならないと意味ないからなぁ。
小暮:横からごめん。AirPodsはiPhone上でワイヤレス充電できるようになるんじゃない? AirPodsもWatchもiPhone上で充電できるようになるとかがスマートだよね。
照沼:でも理想は全部、無線にするのが、あの会社の目的だと思うな。
山本:iPhoneをただの画面の板にしたいという噂は昔からあったと思うんですけど、それが今のAppleの立場でできるのか?っていうのがこれから楽しみですね。どこまで攻められて、どこで折れるのか。
綱藤:でも何もないと逆さで持っちゃいそう。
小暮:別に、逆さに持ったら持ったで、画面がクルッと変われば解決よ。
山本:iPadみたいな感じで?
小暮:うん。どっちでもいいんでしょう、そこは問題ではない。
綱藤:そうなったら欲しいですね。うん、それは欲しいな。
来年のAppleに期待すること
山本:じゃあ、iPhoneはそれが目標点として、2020年代のAppleはアプローチとしてどこらへんに向かいそうですか?
照沼:予想は、今年の3月の発表の路線なんだろうなとは思いますけどね。極力、電力会社が一番もうかるように、そういう方向に行かないと。App Storeでアプリ売ってる業者はたくさんいるけど、そこの土台のAppleが一番儲かっている、みたいなのを、もっと広げていきたいんだろうなとは感じています。
山本:単純にもう、ハードが売れないですもんね。一方で、僕はAppleのデザインに刺激されてデザインを勉強しようって思った身なので、やっぱりハードウエアで魅せられたい。そういう意味では最近悲しみもありますが、インフラとして選びやすいってのも大事ですね…。
綱藤:うん。もう、とことんインフラになって欲しいよね。車とかモビリティ分野にまで行っちゃっていいと思う。もうAppleにはワクワクはしないんだけど、やっぱり信頼性はすごいあるからこれ選んどけば間違いない存在になってほしい。
ファンはファンなりの葛藤を抱き続けているんだなぁ…。
さて、長くなりましたが、今年の座談会もこれにて無事終了。やっぱり今年も、山本くんのApple愛がいい感じに火を吹く1年でしたね。「Appleがしてほしいお金の使い方をするのが好き」という一言に、本当にゾクッとしましたね。やっぱりこいつすげえや。
まぁ、さすがにこれは行き過ぎかもしれないけど、全体としてみると、確かに今年はサービス化やインフラ化が進み、AppleユーザーのAppleに対する期待も変わってきているように思えます。
iPhoneを売るだけの会社じゃなくなったApple。サービスを充実させた2019年は、あとあと見返してみるとAppleのターニングポイントになっているかもしれませんね。