進化、成長、多様化するビジョン市場
イメージセンシングは、間違いなく自動車、産業、消費者の主要市場分野におけるメガトレンドを支えています。オン・セミコンダクターでは、CMOSの主要カメラ技術に関する技術力や経験に基づいたビジョンを提供し、パフォーマンス要求に応えることによって、これら3つすべての分野において、コンセプトを実現できるような取り組みを進めてきました。
例えば、市場動向の把握と顧客との緊密な連携により、産業用カメラ向けのX-Classプラットフォームや自動車用アプリケーション向けのHayabusaなど、新型センサーの開発と導入を推進してきました。代表的な市場ニーズとして、光学ノードで画質の低下を生じない高解像度の実現があります。また、電子回路数の増加に伴って、特に自動車分野を含む携帯型バッテリ駆動製品における電力量が増大するため、エネルギー効率の向上も当然ながら大事な要件となります。ほとんどの市場で、設計サイクル短縮に対する圧力も現実のものとなっています。このことは、製品をより早く市場に投入するために、設計ステージの数を削減し簡素化するのに役立つ、拡張容易なイメージセンサープラットフォームが重要であることを意味しています。
自動車に求められるイメージセンサの要素
安全性と利便性を両立させるための運転者支援ソリューションのニーズが高まる中、イメージング機能を備えた車両に搭載されるシステム数が急激に増えています。これらの高度な機能により、アダプティブクルーズコントロール(車間距離制御装置)や自動緊急ブレーキなどの機能が実現します。これは一部の地域で必須となっているリアビューカメラ、360度サラウンドビューシステム、ミラーを置き換えるカメラモニタシステムなどの駐車支援機能に追加されるものです。
アドバンストドライバーアシスタンスシステム(ADAS:先進運転支援システム)の下で、より多くのカメラや他のセンシング機能がADASの規定レベルを通じて自動車業界を牽引するのに貢献しているほか、将来的には、米国自動運転基準のレベル4やレベル5といった完全自動運転の実現につながることも期待されています。アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、各地域におけるニーズ、社会的受容、インフラ、安全を担保する自動運転の国際基準(これが問題)などによって時期が異なるだけで、この流れは避けられないように思えます。
自動車環境は、イメージセンサーにとって非常に厳しい動作条件やパラメータとなる場合があります。状況によっては、ダイナミックレンジが非常に広くなる可能性があります。例えば、カメラの視野に太陽から直接放射される最も明るい部分と、トンネル内の暗い部分との間には極端なコントラストが存在します。ADASアルゴリズムとドライバの両方に対してシーンを適切に表現するには、高いダイナミックレンジ出力でシーンの詳細をキャプチャすることが重要です。
進むさまざまなセンサの統合
より高度なADASおよび自動運転のための完全なセンシングを支援するには、複数の技術の融合も必要です。イメージセンサーの他に、レーダーや超音波もあります。それぞれに、検出範囲、物体のサイジング、移動物体の検出能力、薄暗い場所や限られた視界での作業能力などのパラメータに関して、特定の長所と短所があります。複数の技術を融合して使用することで、アプリケーション要件をすべて安全かつ効果的に満たすことができます。オン・セミコンダクターは、イメージセンシングだけでなく、レーダーと超音波の両機能を持つ専門技術も開発してきました。これにより、複数の技術とそれによってもたらされるメリットを統合ソリューションで実現できるようになるためです。
自動車メーカーは近年、車両にパルス幅変調(PWM)のLED照明を採用するようになっています。また、電子交通標識や車両メッセージングシステムなども同様にLEDを採用するようになってきており、イメージセンサーメーカーの課題はさらに複雑になる可能性がでてきています。従来のカメラで撮像すると、特に明るい環境では、これらのパルス光源はちらつき(フリッカー)のように見え、ADASアルゴリズムにとって問題となるほか、運転者の注意がそれてしまう可能性があります。こうしたフリッカーを抑制するLFM(LED Flicker Mitigation)技術を高い信頼性を持って実現できる企業は、まだそう多くはありません。
高い信頼性を実現するための厳しい安全基準の遵守は、カメラ/ビジョンアプリケーション向け車両プラットフォームに製品を供給するための必須条件です。AEC-Q100 Grade 2、第4世代ISO26262 ASIL-C (SEooC)などの規格が確立されているほか、最近では、データの送受信を行うカメラを含む多くの車両システムに改ざん防止を提供するために、L4、L5 ADに対応したサイバーセキュリティも重要になってきました。オン・セミコンダクターもこうした標準に沿ったイメージセンサを提供しており、最近では、サイバーセキュリティを内蔵したイメージセンサーの販売も開始しました。
また、Baidu Apolloプラットフォーム、Mobileye、NVIDIA、Intel、Qualcommなどの大手企業のプラットフォームで構成されるエコシステムの中において、ソリューションを機能させること重要視して取り組んでいるほか、センシングと人間の視覚との融合技術(Clarity+として知られている)でも最先端を走るべく、研究開発を続けています。
民生品に求められるイメージセンサの能力
民生市場は、おそらく最も多様性に富み、アプリケーション数も多い市場です。成長の原動力となっているのは、ハイエンドセキュリティカメラ、スキャン、ドローン、仮想現実、拡張現実などのアプリケーションであり、言うまでもなくIoTという包括的な用語の下で使用されています。
自動車の場合と同様に、いかに速く簡単に効果的な解決策を開発し導入するかを決定付ける基本となるのがエコシステムによる開発であり、現在も、そして今後もそうであると考えられます。オン・セミコンダクターでもパートナー企業と協力して、レンズ、カメラモジュール、IRCフィルタ、カメラモジュールなどの製品と自社のイメージセンサーを組み合わせ、エンドユーザーに総合的な統合ソリューションを提供するべく取り組みを進めています。
ビジョンセンサベースのセキュリティ機器は、民生分野の中でもっとも大きなセクターの1つであり、一部は産業分野にも進出しています。民生分野では、依然として中国が最大のユーザーであり、安全な都市、商業ビル、家庭といったコンセプトの実現が主な推進力となっています。要求されるのは、昼夜のパフォーマンス、高いダイナミックレンジ、フレームレート、および解像度の性能限界を押し上げるセンサーです。これらはすべて、コンパクトなフォームファクタ内で達成する必要があります。成長トレンドとしては、サイバーセキュリティやディープラーニングおよびビデオコンテンツ分析のサポート機能の導入などが挙げられます。
産業分野で活用されるイメージセンサへの要求項目
産業用アプリケーションの自動化および稼動数の増加と厳しい性能要件のため、この市場に対応するイメージングソリューションは以前よりも注目されています。ファクトリーオートメーション(FA)やインダストリアルIoT(IIoT:産業分野におけるIoT)、そして高度道路交通システムの迅速な展開をより高度なレベルでサポートするマシンビジョンなどが、まったく異なる領域ながら現在需要を生み出している主なのアプリケーション例です。
オン・セミコンダクターのX-Class Platformは、幅広い産業用アプリケーションの要求を満足させること、ならびに初期段階からの迅速かつシンプルな設計の実現を念頭に、複数の解像度とピクセルに対応するスケーラブルな単一デバイスの提供に向けて開発されました。
最初のイタレーションである3.2μmグローバルシャッターピクセル(従来の4.8μmおよび4.5μmピクセルよりも小型化)は、全体的なイメージング性能を改善しながら、同じ光学フォーマットでより高い解像度を提供します。
グローバルシャッターは、モーションアーティファクトなしで移動オブジェクトをキャプチャする機能もサポートしています。この機能は産業分野で一般的に必要とされる機能です。
産業分野では、他の分野と同様、システムソリューションの設計と有効性をさらに高めるために、センサー性能と一般的なコンピュータインタフェース性能の整合を図ることが重要です。最初の2つのX-Classプラットフォームデバイスは、高速ビデオキャプチャフレームレート(XGS 8000)に対応し、また10GigEインタフェースを利用でき、USB 3.0(それぞれXGS 12000の高速版と低速版)にも対応することで、これを達成しています。
プラットフォームベースで開発する時代が到来
自動車、消費者、および産業市場においてイメージセンシングの課題を克服するための鍵は、さまざまなエンドアプリケーションのニーズに的確に応え、それに適応できる仕様と性能を備えた幅広いデバイスを提供することです。加えて、プラットフォームベースのソリューションであれば、スケーラビリティを容易に実現すると同時に、デザインパスの簡素化が図れ、開発を加速することができるといえます。