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AIエージェントの台頭で起こる「AI失業」。仕事を失くさない人とは?

AIと人間との共生社会が到来すれば、日本経済はどのように変わるのか。マクロ経済学の観点からAIが社会に与える影響を分析する、駒澤大学経済学部の井上智洋准教授に聞いた。

2024年はノーベル賞の受賞者に4人ものAI研究者が名を連ねた。そのうちのひとり、デミス・ハサビスは、「タンパク質の折り畳み」という科学界最大の難問のひとつを解決したことで化学賞を受賞した。

ハサビスは16年に囲碁でプロのトップ棋士を打ち負かして世の中に衝撃を与えた囲碁ソフト「AlphaGo」の開発元Google DeepMind社のCEO。今回ノーベル賞を受賞した研究には、同社が開発した「AlphaFold2」が活躍した。注目すべきは、ハサビス自身は化学者ではないという点だ。

AIが社会に与える影響をマクロ経済学の観点から分析する経済学者の井上智洋は、この受賞を転換点だととらえる。

「10年ほど前からAIはいずれノーベル賞を取るだろうといわれてきましたが、今回のノーベル賞はAIに与えられたと言ってもおかしくないと思っています。化学者の役割をもっているのはAIなので」

AIは、従来の予測よりも速いスピードで進歩している。一般に大きく広がりつつあるChatGPTも、すでに人とのコミュニケーションや文章の作成、ゲームのプレイなどが可能だ。人間のように多種多様なタスクや課題を理解し、解決するための行動を取る「汎用AI」の原型と言えるほどになった。井上も、昨今のAIの進歩を鑑みて、30年ごろまでには誰もが汎用AIだと呼べるものができるだろうと考えている。

こうした時代背景を踏まえて、井上が25年のキーワードとして挙げたのは、「バーチャルヒューマン」と「AIエージェント」の2つだ。

「バーチャルヒューマン」とは、3Dグラフィックスの技術を用いてつくった人間らしい姿かたちをもつキャラクターのこと。ChatGPTには姿かたちがないため機械的な印象をもつ人も少なくないが、そこにバーチャルヒューマンで姿かたちを与えれば、人間のようだと感じる人が格段に増えるだろうと井上は考えている。

人間の姿を得たAIは、エンタメ領域はもちろん、ビジネスの場でも有用だ。例えば、企業の受付スタッフとして立ち、来訪者の要件や呼び出してほしい人の名前を聞いて対応するといったことが可能になる。ほかにも、店舗やECでスタッフとして対面し、商品に関する質問に答えたり、家庭教師として子どもに勉強を教えたり、広告モデルとして動画やCMに出演したりといったこともできるようになる。

バーチャルヒューマンを人間のように動かすには、表情や身振り手振りの連動に加えて、日本語の音声合成や音声認識の技術も重要だが、そうした開発に取り組む日本企業もあり、今後の発展が期待できる。また、バーチャルヒューマン自体も、生成AIによって簡単に自作できるようになるだろうと井上は予想している。

仕事を失くさない人間とは
もうひとつのキーワードである「AIエージェント」は、自律的にタスクを実行できるAIツールのこと。現時点でのAIエージェントは人間の手助けをするアシスタントのような存在だが、さらなる進化を遂げれば、まさにひとりの人間と同じように仕事を任せられるようになる。

「特に、営業や事務といったホワイトカラーの仕事全般がAIエージェントに任せられるようになります。そうなれば、今まで50人の人手を必要としていた仕事を5人でこなせるといったことが起こり、わずかな人数で大きな事業を動かせるようになるでしょう」

バーチャルヒューマンやAIエージェントの技術が発展し一般化すれば、生産性は飛躍的に向上する。少子高齢化で現役世代への負担増が課題視されているが、AIはその大きな支えになるだろう。しかしその半面、AIへのシフトが進みすぎれば、“AI失業”といった新たな問題にも発展しかねない。

クリエイティブ領域で生成AIの活用が進んでいる米国や中国では、すでにクリエイターの仕事の一部がAIに取って代わり、人間はAIが生成したものを微修正することが仕事になっている。仕事量が減ったことで報酬も目減りし、貧困化も進んだ。

「格差は広がるけれどAI失業は起きないと考えている経済学者が多くいますが、報酬がわずかであれば、それは失業と変わらないと僕は考えています」

そうした状況下でも仕事を失くさないのは、AIをしのぐクリエイティビティやホスピタリティをもった人間だ。また、AIのマネジメントにも人手は必要となる。AIに比べてロボットの開発や導入には時間やお金がかかるため、肉体を使う仕事にもしばらくは人手が求められる。

「近い将来に、ブルーカラーの仕事の人手は不足しているのにホワイトカラーの仕事では人手が余っている、というような巨大なミスマッチが起こると考えています。ホワイトカラーからブルーカラーへの労働の大移動が必要です」

人口が減少するなかでAIによって生産性が上がれば、いずれは供給過多となり、デフレが起こるといった問題もある。その対策として、井上はベーシックインカムの導入を提唱している。

「国民にベーシックインカムとしてお金を配り、需要を促進することが大事だと考えています。お金を配って消費してもらわないとバランスが取れなくなる。新しい資本主義が生まれるかもしれません」

井上はさらに、AIを活用することで人出が不要になるため、仲間で楽しく働く小規模事業者も増加すると予想する。

「大企業には勝てなくても、たとえその会社がもうからなくても、ベーシックインカムが生活のベースにあるという状況は、ユートピアに近いのでは。これからは自分で主体的に動ける人が日本の社会や経済を支えていくのだと思います」

いのうえ・ともひろ◎慶應義塾大学環境情報学部卒業、早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。2015年より駒澤大学経済学部で教壇に立つ。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『AI失業 生成AIは私たちの仕事をどう奪うのか?』ほか。



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