中国の半導体企業、カンブリコン・テクノロジーズ(中科寒武紀科技)の株価は、中国政府のテクノロジー分野への後押しを受けて2024年に約500%急騰した。これを受け、同社の共同創業者でCEOの陳天石(40)の保有資産は100億ドル(約1兆5600億円)に達している。しかし、一部のアナリストは、同社の株価が現状の高値を維持できるどうかに疑問を投げかけている。
カンブリコンの時価総額は、上海証券取引所のデータによると1月15日時点で2910億元(約400億ドル)で、ハイテク新興企業向けの市場の創業板(チャイナネクスト)において2位となっていた。しかし、同社の株価は、年初からの2週間で7.3%上昇した後、16日に一時17%急落した。
カンブリコンの株価の急落は、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが中国のハイテクハブの深圳を訪問したとの報道を受けて発生した。北京の投資銀行Chanson & Co.の担当者は、ファンの訪中がエヌビディアの中国事業の強化を狙うものだとの憶測が広がり、それが地元のライバル企業に不利に働いたと述べている。
一部の投資家は、カンブリコンがいずれ「中国のエヌビディア」になると信じている。米中の緊張の高まりの中で、中国政府は国産のテクノロジーの使用を奨励しているため、人工知能(AI)向けチップ市場における国内企業の市場シェアは引き続き拡大するだろうと予測されている。
カンブリコンは、中国では数少ないAIチップ分野の上場企業だ。ファーウェイもチップを製造しているが、同社は非上場企業として運営を続けている。米国政府は、安全保障上の観点からこの2社を禁輸リストに掲載し、米国のテクノロジーにアクセスできないようにしている。
カンブリコン株のPSR(株価売上高倍率)は、直近の急落を経た後も340倍を超えている。一方、ここ1年で株価を約130%上昇させたエヌビディア株のPSRは30倍だ。
香港を拠点とする調査会社Kingston Securitiesのデッキー・ウォンは、「カンブリコンの株価が巨大なバブルなのは明らかだ。投資家は、同社のAIビジネスを楽観的に捉え過ぎている。現状のバリュエーションは、投機的でリスクが高いと考えられる」と述べている。