米アップルは、ここ最近多くの米国企業がダイバーシティ(多様性)への取り組みを打ち切る中で、その流れに逆らおうとしている。同社は、来月末に開かれる株主総会で「多様性・公平性・包括性(DEI)」プログラムを打ち切る提案に反対票を投じるよう推奨した。
米国では、多くの企業がDEIのポリシーを撤回している中で、アップルは、歴史的に過小評価されてきた人々や、アイデンティティや障害に基づいて差別を受けてきた人々の公平な扱いと完全な参加を促進するためのDEIの取り組みを堅持する数少ない企業の1つとなった。
アップルにDEIプログラムの打ち切りを提案した保守系シンクタンク「全米公共政策研究センター(NCPPR)」は、2023年に連邦最高裁が大学入学選考で人種的少数派を優遇する「アファーマティブ・アクション」に違憲判決を下したことを踏まえ、アップルの株主に対し、DEIプログラムの打ち切りを提案した。NCPPRは、DEIや気候変動に関する保守的な政策を推進しており、保守派がWoke(ウォーク)と呼ぶリベラル派の社会的正義を重視する姿勢を非難している。
彼らは、アップルのDEIプログラムが「ほとんどの企業と同様か、それ以上に過激」だと主張し、アップルの多様なサプライヤーを重視する姿勢やDEI担当の幹部の雇用を含むイニシアチブを「差別の一形態」と非難した。
アップルの取締役会は、NCPPRの提案が「不必要なものだ」と主張し、同社が採用や昇進において差別を行っていないと反論した。また、この提案が同社のオペレーションを「不適切」に制限するものだと非難した。
アップルは法律を遵守し、差別禁止規定を守っていると述べており、監査委員会がDEIプログラムに関連する法的・ビジネス上のリスクを積極的に監視していると主張した。同社の株主は、2月25日の年次株主総会でこの提案について投票を行なう予定だ。
ここ最近ではメタとマクドナルドが、DEIポリシーを撤回する企業の群れに加わった。メタの人事担当副社長のジャネル・ゲイルは社内のメモで、「法的および政策の状況の変化」を理由に多様性の取り組みの一部を撤回すると語り、DEIという用語が「物議を醸すもの」になったことにも言及した。
また、ウォルマートやボーイング、フォード、ハーレーダビッドソンなどもDEIへの取り組みを縮小または撤回している。「反DEI」のムーブメントは、イーロン・マスクやビル・アックマンなどの保守派の経営者や投資家らによって支持されており、彼らは、DEIのプログラムが「差別的」で、「言論の自由を侵害している」と批判している。
一方、会員制量販店のコストコも、アップルと同様にDEIポリシーの堅持を表明しており、同社の取締役会は、このポリシーの再評価や削減を求める提案に対し、全会一致で株主に拒否を求めた。「当社は、人々に対するリスペクトと包括性に根ざした企業であり続けることが、適切であり必要だと考えている」とコストコは述べている。