米メタは先日、同社が提供するハイエンドのMR(複合現実)ヘッドセット、Meta Quest Proの販売を正式に終了した。
同社が「究極のMR体験と上質な着け心地」を謳っていたこの製品の公式ページにアクセスすると、「Meta Quest Proは販売終了となりました」とのメッセージが表示され、その代わりにMeta Quest 3の購入を勧められる。
Meta Quest Proは、2022年10月に1499ドル(日本では22万6800円)で発売されたが、目立った成功にはつながらず、2023年3月には999ドル(日本では税込15万9500円)に値下げされていた。
このヘッドセットの苦戦は、アップルが2024年2月に米国で発売したApple Vision Proが直面したものと同様の、「高価格帯のVRは販売が難しい」という現実を見せつけた。
Meta Quest Proは高い性能を誇ったが、2023年10月にMeta Quest 3がリリースされると、さらに人気が低下した。Meta Quest 3は価格が499ドル(日本では8万1400円)と大幅に安価なだけでなく、性能も優れていた。
ただし、この結果として現在のQuestシリーズにはハイエンドモデルの機能が完全に欠けている状況となっている。Meta Quest Proには、miniLEDディスプレイ技術が採用され、Meta Quest 3よりもコントラストが高く、豊かな色彩を実現していた。さらに重要なのは、Meta Quest Proがユーザーがどこを見ているかをヘッドセットが推定する視線追跡機能をサポートしていたことだ。
アップルのApple Vision Proは、この技術を利用して、Meta Quest 3のようにコントローラーを用いずに、目をマウスカーソルのように使えるようにしている。このようなハイエンドの機能は、現在のところVR製品の主流とは言えず、それは残念なことではあるが、メタが最新モデルでMeta Quest 2の成功の鍵となった要素に再び注力したことは、功を奏しているようだ。
同社は、Meta Quest 3やMeta Quest 3Sの具体的な販売台数を公表していないが、CEOのマーク・ザッカーバーグは、昨年の第2四半期の投資家向けカンファレンスで、ハイエンドモデルが「我々の期待を上回る売上を記録している」と述べていた。
メタはかつて、2027年のリリースを目指して第2弾のMeta Quest Proの開発していたとされるが、その計画は中止された。このことは、同社がハイエンドモデルのヘッドセットを二度とリリースしないことを意味するわけではない。しかし、Meta Quest ProやApple Vision Proの販売がふるわなかったことは、技術的に高度なものを目指すよりも、人々が購入するものに焦点を当てる方が、より良い結果が得られることを示している。